「転売を規制しろ！」世論がいくら騒いでも、メーカーも国も“効果的な手立て”を打たない訳

スズキ ジムニーノマド

「定価以上での売却を規制しろ」が不可能な理由

SNSなどでは「定価を超える金額での転売を禁止すればよいのでは」といった意見も見られます。しかし、前出のある業界関係者は「それは難しい」としたうえで、次のように続けます。

「そもそも、現在ではほとんどのモノやサービスに『定価』というものは存在していません。むしろ、『定価』を厳密に設定してしまうと、メーカー側が罪に問われる可能性があります（独占禁止法違反）。

そのうえで、もし仮に『定価以上での転売』が法律で規制されてしまったら、いったいどのようなことが起こるのでしょうか？

おそらく、メーカーが定価を釣り上げることは確実です。『定価』が絶対的な価値を持つ以上、それを決定できるメーカーが強大な力を持つことになるのは明白であり、それがユーザーのためにならないことは言うまでもありません。

日本の消費者保護の歴史は、市場経済の獲得の戦いと言っても過言ではありません。簡単に言えば、『定価』を規制することで、市場経済による柔軟な値付けを推進してきたわけです。

現在、転売が一種の社会問題となっているのは、そうした流れの『負の側面』が出てしまっていると言えます。

かといって、市場経済そのものを否定してしまうのは早計です。その先にあるのは国家が価格を制定する統制経済であり、資本主義そのものの否定につながります」