日産デザイン革命児 新型キューブをベタ誉め
掲載 更新 carview! 文:小沢 コージ /写真:小林 俊樹
掲載 更新 carview! 文:小沢 コージ /写真:小林 俊樹
というわけで個性を残しつつ、上手に日本のキューブから“世界の”キューブへと進化した3代目だが、なにより素晴らしいのは、いつにも増して女性を多用したという日産デザイナー陣もさることながら、経営陣、具体的にはカルロス・ゴーン社長やデザイン本部長の中村史郎氏の力であり、存在である。
それは世界の日産スタジオの中で、某ベトナムデザイナーが描いた日本スタジオ案を採用したという点や、非対称デザインを実現するために多額の予算を割いた話もそうだし、なによりも“デザインを重要視する”という姿勢だ。
実は99年に始まったゴーン改革が商品作りに影響する最たる部分は、デザイン本部を社長直轄にしたことにある。つまり、デザインのトップである中村氏が、ゴーン氏と直接折衝してプランを決め、予算を取る。素人目には大したことではないが、これが大きい。実は去年出た日産GT-Rにしろ、水野エンジニアというこれまた辣腕が、カネ勘定からコンセプトに関するまでほぼ全権をゴーン氏から委任されたから可能になった商品なのだ。
実際、今回のプロジェクトを担当しているデザインマネージャーの清水豊明氏自身「使えるお金を理想的に振り分けることができた。それが大きいですよ」と語っている。
要するに何百人、何千人という人が寄り集まって作る自動車という高度な大量生産商品は、一人の天才デザイナーや天才エンジニアがいてもなにもできない。特に今回のようなデザイン最優先の商品はそうだ。デザインの完成度など、ちょっとしたディテール、素材の変化で落ちてしまうし、エンジニアの反対があれば潰される。つまり、デザイナーの力はもちろん、それを実現させるエンジニアや生産部門の努力と愛情がなにより重要なのだ。
それはハッキリ言って経営者クラスでないとコントロールできないし、会社全体として築き上げてきた文化も必要。3代目キューブも2代目があれほど成功したからこそ、全部門がデザイン案を尊重したわけで、まさしく三位一体だからこそできたカーデザインのファッション化。他社ではそうそうマネができないのだ。
おそらく今後、キューブのような家具風デザイン、雑貨風デザイン、洋服風デザインのクルマはドンドン出てくることだろう。要するにカーデザインのファッション化だ。しかし、果たしてどこまで完成度を高められるか。実際どこまで売れ行きを伸ばせるか。
そこには会社のデザイン力や技術力以上に組織力が関わってくる。私はあのトヨタでさえ、真の意味でのこのクルマの対抗馬はしばらく作れないと思っている。それくらいこの3代目キューブは凄い。
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