日産デザイン革命児 新型キューブをベタ誉め
掲載 更新 carview! 文:小沢 コージ /写真:小林 俊樹
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というわけで2代目キューブから生まれた3代目はキープコンセプト上等、逆に品質を落としやしないか不安だったが、出てみれば杞憂に終わった。ますます進化&純化していたのだ。しかも2代目は2代目で、良さこそ感じさせるが、古さは感じさせない。ある意味、理想的なフルモデルチェンジだ。
ポイントはグローバル化である。ルノーとくっついた日産はさすがに国際感覚が生まれたらしく、キューブの凄さを放っておかず、3代目の企画段階で日米欧の世界市場で売ることが決定。外国人自動車ジャーナリストの「持ち帰りたいクルマナンバーワン」になったこともあったが、なによりも日産のフランス人経営陣自体が、コレはイケると踏んだのだろう。
よってテーマは明確だった。2代目キューブのさらなる進化&インターナショナル化である。分かりやすい部分はまずサイズに出ており、日本で02年当時に適度だったボディは全長が160ミリも延長して3890ミリ、全幅が25ミリ伸びて1695ミリ、全高が10ミリ伸びて1650ミリになった。中でも居住性に影響するホイールベースは100ミリも伸びて、前席のスライド量が53ミリも伸びた上、後席ヒザ回りも45ミリ拡大。身長190センチの人間が前後に余裕で座れるようになった。一方、3列シートのキューブキュービックは国際的に受け入れられないので廃止。残念と言えば残念だ。
ボディは確かに国際基準に合わせて大きくなった。ただし、それでも回転半径を4.6メートルとクラストップレベルに留めておいたのは英断で、まさに3代目は2代目の魅力を落とさず進化させる方向だったのだ。
肝心のデザインだが国際化はまずフロントマスクに現れている。「サングラスをかけたブルドック」と日産が言うように、ある種、 ハリウッドのピクサーアニメに出てもおかしくないキャラクター性を持っており、ロボコップ風と言ってもいい。きっと男性女性ともにウケるだろう。
一方ボディの「角のとれた四角」デザインはさらにとろける方向に進化。トヨタのいうIQとも、ホンダのワイルド路線とも違う、上品な路線だ。これは今後の日産デザインのアドバンテージになるはずだ。
驚くべきは、そのバリエーションの多さというか、ボディパーツの多さだ。実は新型キューブは2代目で評判の良かった左右非対称リアゲートを踏襲するために、右ハンドル車用と左ハンドル車用で作り分けている。そう、機能ではなく“デザイン”のためにプレスの手間を倍にしているのだ。
それは当然リアゲートだけでなく、リアフェンダーにも及び、そのほかドアミラー、サンバイザー、天井もサンルーフの有る無しで2種類、インパネもインパネシフトの有る無しで2種類作り分けている。ハッキリ言ってメチャクチャ手間とコストのかかるやり方だが、省略はしなかった。従来だったら、まず3代目をグローバル商品にする段階で、真上に開く対称デザインを採用していただろう。だが、キューブはあえて手間を倍にしてまでもデザインの“純度”にこだわり、デザイナーに好き放題にやらせたのだ。
結果、インテリアも2代目のやや殺風景なムードから一変している。インパネやシート、ドアトリムを含む全体は日産が「ジャクジーカーブ」と言うように一体化。面白いのはディテールで、いたるところに波紋模様が配され、和紙に近い透け具合のSHOJIシェードや、輪ゴム風のクリップが付いたドアハンドルなどを採用。メーターは速度計がブルーで回転計がホワイト。なんだと思ったら「地球と月」を表すという。デザイナーが嬉々として開発してる様子が目に浮かんでくるようだ。
2代目のそっけないインテリアもいいが、3代目の饒舌なデザインも悪くない。まさに見事に進化している。
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