なぜトヨタは「F1復帰」と言わなかった? GRとハースが組む莫大なメリットと、そこに込めた豊田氏の想い
掲載 carview! 文:編集部/写真:トヨタ自動車 57
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もちろん、一個人の想いだけで物事が進むほどF1は甘い世界ではない。今回の業務提携はTGR、ハースF1双方にとって莫大なメリットがあるのだ。
レッドブルやメルセデスといったトップチームは規模も大きく、従業員の数は数千人とも言われている。一方ハースF1は、最近人員を増やしているがそれでも300人程度。札束で殴り合うようなF1の世界で「小さい者がどれだけ戦えるか(小松氏)」を実践する異色の小規模なチームである。
ハースF1は、アメリカに本拠地を置き、工作機器メーカーである「ハース・オートメーション」の創業者であるジーン・ハース氏がオーナーを務めるものの、(詳細は割愛するが)過去何度もスポンサーに泣かされ安定した財務基盤を確立できなかった。そのため、小規模でどう戦うかを主眼に置いたチーム作りを行わざるを得なかったのだ。
優秀な人材が集まっているとはいえ、そこはやはりF1。規模がものをいう世界である。現状を打破しトップチームに近づくために、ハースF1はTGRの豊富なリソースを使えるようになるのだ。
一方のTGRは、人材育成だけでなくF1という極限状態での最先端技術の知見を手に入れることができる。高橋プレジデントは、空力開発やカーボンといった最先端素材、シミュレーションなどを例に挙げ、そのほかコネクティッド技術など色々な可能性がある。
いずれにせよこれでトヨタは、F1、WEC、WRCという3つの世界選手権に同時に名を連ねるメーカーとなった。世界広しといえど、その圧倒的な資金力とリソースに驚くばかりである。
ここで気になるのは、フェラーリとの関係だ。ハースF1はパワートレイン(エンジン、ギアボックスなど)をフェラーリから提供してもらっており、2025年のドライバーにはフェラーリの育成部門出身のオリバー・ベアマンが名を連ねるなどフェラーリとの関係が強い。
TGRモータースポーツ担当部長の加地雅哉氏によると「フェラーリのパテント以外」での技術協力ということらしく、今回はあくまで発表だけであり、具体的な提携内容はこれから詰めていくことのようだ。
そしてトヨタとして見逃せないのは、やはりF1が誇る宣伝効果だろう。
近年は、アメリカのリバティ・メディアがF1の商業権を獲得し、コンペティションの側面だけでなくエンターテイメントの面でも急成長。F1は元々ヨーロッパが中心のレースだが、近年は特にアメリカでの人気が爆発し市場価値が一気に高まった結果、2026年以降、ホンダがアストンマーティンと組み復帰(現在はあくまでもHRCを通じてレッドブル、レーシングブルズを技術支援)、アウディがザウバーF1チームを買収して参入、王者レッドブルはフォードと提携するなど、続々と自動車メーカーが参入している。
一度撤退したホンダが早急にF1に復帰を決めたのも、北米に強い地盤を持つホンダがF1の影響力を無視できなかったのが一因と言われている。アメリカのチームであるハースF1と業務提携すれば、アメリカでのトヨタ車の販売に弾みがつくかもしれない。
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