【やはり本命】クラウンセダンの水素は傑作、HVも最高に快適。スポーツは最も若いユーザー向け
掲載 carview! 文:塩見 智/写真:小林 俊樹 44
掲載 carview! 文:塩見 智/写真:小林 俊樹 44
「トヨタ クラウン」のセダンとスポーツがとうとう発売された。同じ車名を冠した4つのボディスタイルのモデルを一度に公開し、時期をずらして発売していくという、国内シェアが圧倒的に大きいメーカーだからこそ可能な規模の、4マスではなくSNSを強く意識した、同時におそらくコロナ禍や紛争などによる部品供給の不安定さなどにも対応したお披露目の真っ最中であるクラウンシリーズ。
昨年の「クラウン(クロスオーバー)」発売から1年後のこの度、「クラウン(セダン)」と「クラウン(スポーツ)」が発売され、クラウン祭りもあとは「クラウン(エステート)」の発売を残すのみとなった。姿かたちはもう散々話題になっているので、走らせた印象をお届けしたい。
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まず試乗したのはセダン。ラインアップはシンプルだ。トヨタの燃料電池専用モデルである「ミライ」とプラットフォーム、パワートレーンを共有するFCEVと、縦置きの2.5L直4エンジンを用いたシリーズパラレルハイブリッドの2種。
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いずれもワングレードで後輪駆動のみ。価格はFCEVが830万円、ハイブリッドが730万円だが、補助金額の大きなFCEVのほうが実質負担額は少ない(諸条件あり)。ただ一定期間後の残価まで考えるとどちらが高い、安い、得、損というのは判断が難しい。
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最初にFCEVを試した。FCスタックで発電した電力を用い、最高出力182ps、最大トルク300Nmのモーターを駆動する。FCスタック自体が発揮できる最高出力は174psだが、必要な場面ではバッテリーからも電力を供給することで182psが可能となる。
車両重量は2000kg。2トンに対し182ps、300Nmと聞くと動力性能は大したことがないのではないかと想像するかもしれないが、そこは発進時にすでに最大トルクに達しているモーター駆動の特性によって、実用上十分に力強いダッシュが可能だ。
巨大なバッテリーと大出力モーターを組み合わせたラグジュアリーBEVに比べれば明らかに遅いので、脳みそが置いていかれるようなダッシュを求める人はクラウンを検討すべきではない。ただそんな加速が本当に必要かということは考えてみてほしい。

特筆すべきは快適性だ。高剛性ボディと前後マルチリンクのサスペンションがもたらす乗り心地は素晴らしい。全域でソフトで、路面からの入力をそのまま乗員に伝えるのではなく、十分に吸収して角を丸めたうえで伝えてくる。
もっとシャキッとした、ロールが少なくフラットネスを感じさせる挙動を好む人もいるだろうが、セダンははっきりとソフト寄りの特性をもたせ、わかりやすい乗り心地のよさを際立たせていると感じた。後述するスポーツはもっとキビキビとした動きを感じさせた。複数モデルがある強みを活かし、キャラクターを分けたのだろう。
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ソフト&マイルドな乗り心地が、電動パワートレーンの静粛性とスムーズさと組み合わせられることで、FCEVセダンは非常に快適なクルマとして成立している。低速域から豊かなトルクを発するモーターによって、ドライバーが求める勢いの加速を、静かなまま、変速ショックなく実現する。
エンジンがなくても、ロードノイズや風切り音によって、さほど静粛性が高いとはいえないBEVもあるなかで、クラウンは静かなパワートレーンを台無しにしない吸音、遮音、防音対策をボディの各部に施している。そして速度域を問わずロードノイズの低いタイヤを選んでいる。
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