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【惜別】最後のNSX、タイプSに試乗。生まれも終わりも早すぎた哀切のスーパースポーツ

生まれるのが早すぎた

本当に、もったいないーーーーーーー。

筆者から「NSX」に贈る言葉があるとすれば、この一言に尽きる。

今回試乗したのは世界限定350台、日本の割り当ては30台となったスポーティグレードの「タイプS」。シリアルナンバー「000/000」のメタルプレートを着けた、ホンダ所有の貴重な一台だ。

みなさんもご存じの通り2代目NSXは、今年の12月をもってその全ての活動に幕を下ろす。標準仕様車は既に昨年7月で生産を終えており、残りの時間は、このタイプSの生産に費やされる。つまり本来ならば派生モデルとしてそのラインナップに花を添える存在だったであろうタイプSは、実質的なファイナルエディションになってしまったというわけである。

そんなNSX タイプSに乗り込んでみると、そこには「スーパースポーツのコクピットに滑り込む」という、特別な世界観があった。「NSXを運転する」という行為はいつも、やはり特別だ。

ただそれと同時に、「もはやちょっと古い」という印象も抱いた。まず筆者にそう感じさせたのは、スタートの瞬間だ。スターターボタンを押すと背中に積まれた3.5リッターのV6ツインターボは、それがコールドスタートであればあるほど、短いクランキングのあと豪快な爆発音を立てて目覚める。

「クワイエットモード」を選択して走り出せば、エンジンはすぐさまその鳴りを潜めるのだが。量産“ハイブリッド”スポーツカーとして先陣を切ったNSXであれば、ここは無音で走り出して欲しかった。

今回タイプSはIPU(インテリジェント・パワーユニット)のバッテリー出力を10%、その使用可能容量を20%向上させているのだが、最後の進化としては、もっと現代の空気感に合わせる努力をして欲しかった。

ちなみに、形式と排気量こそ異なるが同じV型6気筒ツインターボと、後輪のみのアシストだが同じくモーター&バッテリーを搭載する「フェラーリ296GTB」は、既にこうした所作を身につけて、現代の路上に残る術を猛アピールしている。

長くなるが、続けさせて欲しい。ここでひとつホンダの弁護をするならば、それはNSXの登場が、2016年ともう6年も前の話だということだろう。確かにその頃私たちは今ほどEVシフトの波にさらされておらず、むしろホンダのフラグシップスポーツカーが重たいバッテリーを積むことへの抵抗感の方が高かった。そんな時代だっただけに、新型NSXにとってこの初爆の儀式は必要だったのだと思う。

そう、NSXは生まれるのが早すぎたのだ。

そして僅か6年の月日が、アッという間に電動NSXを古くした。これこそが、常にアップデートを迫られるデジタル化の恐ろしいところである。

>>ホンダ NSXのスペック詳細はこちら

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