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【惜別】最後のNSX、タイプSに試乗。生まれも終わりも早すぎた哀切のスーパースポーツ

走り出せば気分は晴れる

さてそんな小言ばかりを並べながら乗り込んだNSXだったが、走り出してしまえばその気分は、驚くほどスッと晴れた。最初に感じたのは、その巨体に相応しくない身軽さだ。タイプSの名にふさわしく足周りは硬めに設え(しつらえ)られていたが、乗り心地はすっきりと爽やか。ハンドルを切ればスマートに進路を変更し、浅いアクセル開度でもスッと加速する。

NSXは北米主導のアジャイルな操縦性をオーソドックスな走りへと改めるために、19年モデルでフロント2モーターの制御とシャシーに変更を加えた。そして今回は、さらにこのシャシーをリニアにコントロールするべく、磁性流体ダンパーのセッティングを見直している。

確かにその乗り味は、街中でもダル過ぎず過敏過ぎず、タイプSのキャラクターを的確に表現していた。ワイドトレッド化したタイヤ(ピレリ Pゼロ)とホイールの剛性が高い分だけコツコツ感は出るが、全体としてはスポーティながらも、すっきり心地良い乗り味が得られていた。

高速道路に入っても、その快適性は高い水準で保たれる。街中同様にタイヤがよく転がり、その走りはクワイエットモードと非常に相性がいい。アクセル開度が浅い状況では積極的にエンジンを止めて、モーターで走ってくれる。

車幅の割にその操縦性はあまりにイージーだから、ほどよく固められたサスペンションの乗り味だけが、スポーツカーに乗っていることを自覚させてくれる。9段もあるDCTのパドルを時折いじくり、エンジンブレーキで車間を調整したり、ちょっとだけ加速を楽しむ。

だが、それでいいのだ。

沢山のクルマたちが走る街中や高速道路で、品良く走るNSXのアンダーステイトメントっぷりは本当に心地良い。その注目度は、抜群に高い。しかしマットグレーのボディカラーと、エッジを効かせながらも落ち着きのあるデザインのせいだろう、周囲の視線は柔らかく好意的だ。

>>ホンダ NSXのスペック詳細はこちら

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