NSX一般公道試乗。見えてきた美点と欠点、販売問題も
掲載 更新 carview! 文:岡崎 五朗/写真:望月 浩彦
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新型「NSX」の開発コンセプトは「新時代のスーパースポーツ体験」だという。これだけではあまりに抽象的すぎてピンとこない。もちろん、3モーターハイブリッドが生みだす新次元の走行フィールも新型NSXのコアバリューのひとつだ。しかし、よくよく聞いていくと、やはりというか当然と言うべきか、根っこの部分にあるのは初代NSXが目指した「人間中心のスーパースポーツ」という価値だという。
ホンダが初代NSXに与えた使命は「スーパースポーツを伝統から解き放ち人間のために解放する」こと。スーパーカーの民主化と表現したほうがよりストレートでわかりやすいかもしれない。すなわち、ごく一部の限られた人のためのものだったスーパーカーに、アフォーダブルな価格や優れた快適性、運転しやすさ、使い勝手といった要素を入れ込むことで、より幅広い人にスーパーカーを楽しんでもらうことをホンダは目指した。
スーパーカーは独善的であるからこそスーパーカーなのであって、親しみやすいスーパーカーなどに魅力はない、という意見もあった。たしかに、民主化されたスーパーカーというフレーズに自己矛盾が含まれることは否定できない。しかし、それ故誰も手をつけようとしなかった領域にホンダはフロンティアを見いだし、一世一代の大勝負に打ってでた。結果は・・・1990年から2005年までの15年の累計販売台数は1万8743台。平均するとおよそ月産100台。商業的にみれば決して成功とは言えない数字だ。しかし、NSXがライバルに与えた影響は大きく、フェラーリもポルシェもNSX登場以降、「日常性」を強く意識したクルマ作りへとシフトしていった。これは先輩モータージャーナリストに聞いた話だが、NSXがデビューして間もない頃、ポルシェの試乗会に参加したとき「どんなスポーツカーが作りたいか?」という問いかけに、ポルシェの若いエンジニアは「NSX」と答えたという。そう、民主化は正しい方向だったのだ。
とはいえルックス面でもスペック面でもドキドキさせられる要素に欠けていたことは事実であり、それが販売先細りの一因になったのは否定できない。しかし、だからといって、ホンダはNSXをおざなりには扱わなかった。まったく商売にならないような状況が続くなかでもNSXは絶えず改良を受け続けたし、地味ながらレース活動も続けられ、高度なリフレッシュプログラムやオーナー向けドライビング教室も開催された。おそらく、NSXのオーナーは非オーナーが思っている以上に満足していたのではないだろうか。
それだけに、次期NSXにはもっとセクシーで、もっと美しく、いろいろな意味でドキドキワクワクさせられるようなクルマであって欲しいなと思っていた。果たして新型NSXはどんな仕上がりだったのか。
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