先行開発から10年、レース挑戦から5年で到達した「水素が当たり前の光景」。なぜTGRは“超電導”という未知の世界に挑むのか
掲載 carview! 文:ハシモトタカシ 16
掲載 carview! 文:ハシモトタカシ 16
トヨタは、超電導技術だけでなく、前戦の岡山ラウンドで「GRヤリス」に新開発の2.0L直列4気筒ターボエンジンをミッドに搭載した「TGRR GRヤリス Mコンセプト」をデビューさせた。さらに「GRヤリス」の8速AT「GR-DAT」や、次期「GR86」の開発をS耐の場で行っている。
なぜトヨタは、ここまで辛く苦しいレースの現場で、様々なことに挑戦するのだろうか。高橋氏は次のように話す。
「レースで走らせると色々な課題が出て、その度にカイゼンしているが、まだまだ我々の目指す『もっといいクルマづくり』に満足はしていない。逆に、レースで走らせるほど、我々の目指す姿が遠いというのがわかってきて、やればやるほど『もっといいクルマ』が遠い存在になっていく。それはいい意味でもあって、終わりなくカイゼンしていくのが『もっといいクルマづくり』の本質」(高橋プレジデント)
レースへの挑戦こそ、TGRのDNAなのだ。さらにレースの現場で人も鍛えていく。トヨタによると、のべ1000人を超える社員が、S耐の現場でクルマづくりに参画したという。
「2021年に水素でのレースを始めた時は、世の中でも水素自体があまり認知されていない時期だった。そんな中でも、我々はマスタードライバーで会長の豊田と一緒に『なんとか水素社会の未来を作ろう』ということをぶれない意思として進めてきたからこそいまがある。
一歩一歩、着実に地に足をつけて進んでいく。それがサスティナブルな社会を作るということだと思うので、今後もぶれることなく『未来をつくるんだ』という強い意思で進んでいきたい」(高橋プレジデント)
今回、インタビューの最後に高橋氏がおもむろに手を挙げ、伊東氏に逆質問をする次のような一幕があった。
「水素エンジンは、実は伊東が2015年ぐらいからずっと続けているんですけど、10年やってきてどうでしたか?」(高橋プレジデント)
伊東氏の答えが次だ。
「先行開発は、やっている自分たちもうまくいくかどうかわからない中始めるんですけれど、S耐という場があって、自動車メーカーとしてこういったチャレンジをやらせていただいたからこそ、いまの水素エンジンがある。こういう環境を頂けているということが、エンジニアとしてとても光栄。最終的に商品に繋げていくのが目標だが、まだ商品化に至っていないから、商品に至る技術にしっかり仕上げていく」(伊東氏)
伊東氏はやや謙遜して答えたが、噂によると、S耐に出る前に一時水素エンジンの開発はお蔵入りになった過去があるそうだ。それでも伊東氏は諦めず、いまではS耐で当たり前の光景にまで技術が進化した。
伊東氏がまいた小さな種は、地球課題を解決する技術のひとつとして、いまや多くの人から期待されるところまで成長した。伊東氏の水素技術は象徴的なエピソードの1つだが、超電導への挑戦をはじめ、こうして次世代のクルマの芽が1つ1つ育てられているのである。
先行開発を始めて10年、そこから仲間を集め一歩一歩進んできた5年。次の10年は、いったいどんな景色が広がっているだろうか。
(終わり)
(写真:トヨタ、ハシモトタカシ)
ログインしてコメントを書く
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
EVバッテリー革命? 「純度99.79%リチウム」回収に米研究チームが成功、リサイクル率5%の壁を突破なのか
ついに走ったぞGRヤリスMコンセプト! トヨタ大好き大学生がS耐第6戦の裏側に密着!! ミドシップ化の先に見える「グループB」の目標!
来季F1マシンは本当に400km/hも出せるの? 今夏浮上したトンデモ説をメルセデス代表が補足「出せるかもしれないが次の直線は遅くなる」
「このバイク、どんな未来を見ているんだろう」カワサキとヤマハ 2台の「水素エンジンバイク」の魅力に迫る!! ~高梨はづきのきおくきろく。~
トヨタ「“新型”RAV4」発売に反響“殺到”!? 「トヨタ恐るべし…」「高級車じゃねーか」 約7年ぶり全面刷新で「450万円スタート」 大幅進化した“SUVの最重要モデル”が話題に
トヨタ「MR-2」復活を示唆! 世界初の「画期的ランプ」&日本初の「レイアウト」採用! これまで“2シータースポーツカー”を支えてきた革新的技術って?
「水素エンジンバイク」に立ちはだかる障壁と、ヤマハの挑戦…開発者「環境と感動を、どちらも諦めない」
トヨタの新スーパーカー「GR GT」はなぜ“カーボンモノコック”ではなく“アルミ骨格”を選んだのか? LFAの悔しさが生んだ“新生フラッグシップ”のねらいとは
WRCに新コンストラクターが誕生! 新規定”WRC27”のもと「プロジェクト・ラリー・ワン」が参入
日産が新型「セレナ」発表! 3年ぶりの「デザイン大刷新」&歴代初の「“Google搭載”システム」採用! “新たな派生モデル”を追加し26年2月から発売へ! 278万円から
2026年F1新システムの正式名称が発表に。『オーバーテイク・モード』『ブースト・モード』『アクティブエアロ』が登場
日産が放つ「220万円」の新型セダンが凄すぎる! 新開発PHEV「N6」の実力とは? 中国勢猛追の切り札に【試乗記】
リッター32km以上走る! スズキ斬新「ちいさな“クーペ”」がスゴイ! 800cc「直3」&全長3.5m級ボディ採用! 軽自動車よりも“軽い”「レジーナ」とは
650馬力超! トヨタ「新型フラッグシップスポーツカー」世界初公開! 4リッターV8ターボ×ハイブリッド&メーカー初の“超軽量”オールアルミボディ採用! 27年発売予定の「GR GT」の凄さとは!
640馬力の「和製スーパーセダン」に“反響殺到”!「やっぱり日本の技術はスゴイ!」「未来感が好き」の声も! “最高速370キロ”の超・高性能実現する「8輪駆動」の爆速マシン「エリーカ」とは!
改良後すぐ受注停止の「ノア/ヴォクシー」…現在は「ノアのガソリン車」のみ。買えない現状にユーザーは“お怒りモード”?
【実際どうなの?】日本カー・オブ・ザ・イヤーで2位獲得! 新型「プレリュード」購入者のリアルな声
【EVなんてまだ早い?】そう思う人向けに「ぜんぜん売れてない電気自動車」の意外と悪くない日常メリットを拾ってみた
【V10「LFA」超えの可能性?】新型「GR GT」の4.0L V8が“トヨタ最高傑作”と噂される理由。EV時代でもV8を捨てなかった背景に迫る
【正式発売】トヨタ新型「RAV4」がついに登場! 価格は450〜490万円で“最大約64万円上昇”。月販3000台目標も早期完売の可能性濃厚か
【第3世代e-POWER搭載】次期「ローグ(日本名エクストレイル)」の燃費が判明! RAV4やCR-Vなどライバルに迫る実力で日産経営再建の切り札に?
絶好調すぎて受注停止の「ヤリスクロス」。26年2月の改良では10.5インチディスプレイ採用で10万円ほど値上げ【販売店情報】
「ステップワゴン」が“特別仕様車効果”で販売好調。12月19日発売の「30周年記念車」で「セレナ」との差をさらに広げる!?
【軽なのに300万円超え…なぜ売れる?】デリカミニ上級グレードが「普通車ユーザー」に刺さる本当の理由
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!