音声認識やデジタル画面が斬新なメルセデスAクラス。課題は固めの乗り味と価格
掲載 更新 carview! 文:岡崎 五朗/写真:菊池 貴之
掲載 更新 carview! 文:岡崎 五朗/写真:菊池 貴之
いくら先進的な装備を備えていても、クルマはクルマ。走らせてなんぼである。とくに「それなり」の価格をとるプレミアムブランドの商品であれば、走りはそこそこでOKというわけにはいかない。静粛性、快適性、走行性能などにキラリと光る部分が欲しくなる。
そんな観点でAクラスを眺めると、いいところと悪いところがある。いいところは、スポーティで小気味よいドライブフィールだ。ワインディングロードはもちろん、街中のちょっとしたカーブや四つ角でも、ソリッドでダイレクトなハンドリングを楽しめる。低回転域から太いトルクと良好なレスポンスを生みだす1.3L直4ターボエンジンと、小気味よい変速をする7速DCTの組み合わせも、そんな印象を強めている。
メルセデスといえば重厚かつしなやかで滑らかなドライブフィールが持ち味、なんて先入観で乗ったら、きっと目から鱗が落ちると思う。Aクラスに限らず、最近のメルセデスはアジリティ=俊敏性というキーワードを好んで使う。新型Aクラスも間違いなくその流れのなかにいる。
この背景には、ブランド全体で若返りを図っていることが挙げられる。BMWやアウディといったライバルよりユーザーの平均年齢が高いのがメルセデスの悩みであり、それを打破するための強力なツールが前述のMBUXであり、若々しいデザインであり、スポーティーな走りというわけだ。
一方で、スポーティな走りは快適性にはマイナスの影響を与えている。16インチタイヤ装着車はトレッド表面が固めの印象で、路面のザラザラを正直に伝えてくる傾向。一方、AMGラインの18インチタイヤは、ザラつきなど微少領域での当たりこそマイルドだが、大きめの段差などで伝わってくるゴツゴツ感は16インチより大きめになる。いずれにしても、昔流のしなやかで滑らかな古きよきメルセデス流の乗り味を期待する人が乗ったらモアコンフォート! と言いたくなるだろう。それでも先代と比べれば乗り心地は相当よくなったが、できればもう1段の洗練を望みたいというのが僕の意見だ。
エンジンの振動特性も気になった。基本的には非常に扱いやすく、パワーも十分あり、燃費も上々なのだが、2500rpm付近にザラついた振動が出る領域があり、それが乗り味の上質感をスポイルしている。高速道路領域の速度ではほとんど気にならないが、発進加速時や街中での加速時にはステアリングに微振動が伝わってきて、これが意外に気になる。街中ではドライブモードセレクターをECOにセットすると、アクセルを深く踏み込まないかぎり2500rpmに達する前にトントントンと素早くシフトアップして振動ピークを回避してくれる。
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