6シリーズ グランクーペ BMWの新たな方向性

シチリア島の路面がこんなに滑るなんて！

コクピットに座るとフルカラーのヘッドアップディスプレーが目に飛び込む。視線を大きく外さずに速度やカーナビの方向を知ることができるのはうれしい。エンジンも気持ちいいがハンドリングもご機嫌だ。トップモデルの650iはまだ試乗していないが、きっと骨太な走りが可能だろう。

3リッター直6ターボを積むメインの640iはたっぷりと走ることができた。スロットルを踏み込んだ瞬間から力強い加速が可能だ。しかしシチリアの道はとても滑りやすいのでスロットルを思いきり踏み込むとテールがグラッと流れる。BMWともあろうクルマがどうしたのか？　と思ったが、実は路面の影響であったようだ。ハンドリングはシャープで楽しめるが、リヤタイヤのトラクション性能だけは不満が残った。BMWのシャシー・エンジニアも「シチリア島の路面がこんなに滑るなんて」と驚いていた。

クーペよりもロングホイールベースとなった分、俊敏性が犠牲になっているかと思ったが、実際はまったく不満はない。ダイレクト感のあるステアリングフィールも健在で、19インチのミシュランタイヤはダンピングも良かった。

荒れた路面や段差ではタイヤの硬さがすこし目立っていたが、運転席はあまり気にならないし、許容範囲と言えそうだ。後席ヘッドクリアランスも充分に確保され、長距離移動も快適だ。実用性は十分に合格点を与えることができる。

クーペの美しいデザインと上品なインテリアは、オーナーをきっと満足させてくれるに違いない。デザイナーがしきりに強調していた「スタイルは遊びじゃない」という言葉が印象的であった。

※写真35～39は640d。その他は640iです。