トヨタ スープラ試作車は限界域でピーキーな走り。86とは世界が違う
掲載 更新 carview! 文:五味 康隆 /写真:望月 浩彦
掲載 更新 carview! 文:五味 康隆 /写真:望月 浩彦
スープラのキャラクターは鋭すぎるほどの旋回力から生じている。クルマの基本特性はホイールベースとトレッドの縦横比に左右される。ホイールベース(縦=前後のタイヤ間隔)が短くなり、トレッド(横=左右のタイヤ間隔)が広がるほどに旋回力は高まる。スープラの比率は耳を疑うほど小さい縦:横=1.6:1以下。唯一公表されているホイールベース2470mmから計算すればトレッドは1544mm以上であり、先代モデルとも言える現行型「BMW Z4」のトレッドより広いのに、ホイールベースは25mmも短い。
この縦横比で高速道路などで直進安定性が出るのか? という質問には、ボディの下回りを見てくれとのこと。ボディ下面のフラット化は当然として、サスペンションアームにまで空力フィンを施すなど、マニアックな空力処理が満載だという。このあたりの詳細は市販モデルで明らかになるだろう。
プロトタイプをそんなに詳細に分析しなくてもと言われそうだがもう少しだけ。
現時点だと握りこぶし2つ半ほど切ったあたりからフロントタイヤの接地感が変化する。ハンドル切れ角に対するリニアリティの変化は多くのモデルにあるが、直6エンジンによるフロント剛性の高さからか、スープラはこの変化が大きい。
足回りも気になった。この手のハイパフォーマンスカーの最も難しいところで、もう少し路面に沈み込む方が安定&安心感が高まるが、乗り心地の悪化や荒れた路面でグリップロスを嫌ったか、サスの伸び側が柔らかく、アクセルやブレーキを戻すとき、フワッと荷重抜けする。ハンドリング特性が変わるし、特に雨でのグリップ感が抜けるのは緊張する。
強い加速や旋回力で縮んだサスが解放された時にどう戻すかが大事で、今は唐突に戻り過ぎて接地感が不足している。この辺りはメーカーやブランド、さらにはテストドライバーの好みによっても方向性は異なるので、市販モデルでどうなっているか注目だ。
最後に、恐らく今回用意された直6ターボ以外に、直4ターボ搭載グレードも出るはず。こちらは軽く、足回りもスッキリとした乗り味の通常サスペンションになると予想できるので、スポーツカーとしての操る楽しさが備わっている可能性が高い。何はともあれデトロイトモーターショーに注目しよう。
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五味康隆(ごみ やすたか):モータージャーナリスト
自転車トライアル競技で世界選手権に出場。その後4輪レースに転向して全日本F3選手権で3年間戦ったのち、モータージャーナリスト活動を開始するという異色の経歴を持つ。確かなドライビング理論と優れた運転技術に裏付けされた解り易い解説には定評がある。みんカラブログ「eカーライフ」Youtubeチャンネル「E-CarLife」、各種SNSでも積極的に情報発信している。
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