新型ラングラー試乗 見た目だけに惹かれて飛びつくクルマではない
掲載 更新 carview! 文:塩見 智/写真:FCAジャパン
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泥濘路、砂地、雪上、氷上などオフロードにもいろいろあるが、今回のルビコントレイルは岩場。クルマ全体がのっかるほど巨大な岩からソフトボール大の岩まで、無数の岩が乾いた大地に広がっている。最初に3.6リッターV6エンジンを搭載したアンリミテッドで走行した。このエンジン、リファインされたという説明はあったが基本的に従来と同じものだ。乗った印象も同じ。パワーもトルクもピーク値を追求するのではなく、低回転からなるべく広い範囲で粘り強く力を発揮する性格のエンジンだ。
ローレンジに入れ、5km/h未満の歩くような速度で岩をひとつひとつ乗り越えていく。ルビコンのローレンジは4:1。すなわちトルクが約4倍に増幅されたのと同様の効果をもつわけで、どんな路面に対しても停止してしまうようなことはなく、乗り上げて進んでいくのが痛快。同時にサスペンションのストロークと動きのスムーズさに驚かされる。ルビコンにはフロントスウェイバーディスコネクトという機能が備わる。これは低速走行時にスタビライザーの機能を一時的になくすシステムで、作動させるとサスペンションストロークが最大化され、片輪がボディにめり込むように縮んでいる時、もう片輪が呆れるほど垂れ下がるようになる。これによって4輪とも路面に接地している状態を保つことができ、常にトラクションが確保される。それにしても4:1のローレンジは機械式のヒルディセントコントロールのようなもの。急な下り坂でアクセルから足を離すとじわりじわりと下ってくれる。
試乗中、何度か1輪ないし2輪が接地しきれずトラクションを失ってしまったことがあったが、あわてずにリアデフロックのスイッチを入れると、簡単に局面を打開することができた。今回はお世話になることはなかったが、ルビコンはさらにフロントデフもロックさせることができる。これはつまり4輪が完全に同期され同じだけ回転することを意味し、4輪車としてこれ以上ないトラクション能力を発揮する。トラクションの鬼となるわけだ。ただしこの状態ではステアリングを切ってもほとんど曲がることができない。脱出のための最終手段だ。なお今回は試乗できず、日本導入のタイミングも不明だが、サハラグレードはラングラー史上初のセンターデフ付きフルタイム4WDシステムが備わるという。
2リッター直4ターボのアンリミテッドに乗り換える。オフロード走行の印象は3.6リッターV6とほとんど変わらない。自然吸気のためか岩場でのアクセルワークにおいてほんの少しV6のほうがレスポンシブに思えたが、その差はわずか。ただオンロード走行では、スペックで優れる2リッターターボのほうがトルキーで好印象なのではないかという事前の予想が外れ、体感的なパワー感は変わらず、回転が伸びやかな分、V6のほうが若干好印象だった。ターボエンジンのほうが車重が10kg強重いとはいえ(ルビコンの場合)、パワーアップ分が相殺されるほどでもないのだが……。とはいえ片方がよくてもう片方がダメというわけではなく、好みで決めてよいキャラクターの違いという印象だ。日本では2リッターターボが税制面で有利になるのが悩ましい。
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