日本試乗フィアット500論 これはクルマじゃない!?
掲載 更新 carview! 文:小沢 コージ /写真:荒川 雅臣
掲載 更新 carview! 文:小沢 コージ /写真:荒川 雅臣
ってな具合の能書きは後回しにするとして、私は日本に入ってきたばかりの新型500を見て、ちょっと安心した。モーターショーなどで知ってはいたのだが、改めて公道で見ると存在感があるし、華がある。なんというか、見事に“フィアット500”してるのだ。
ボディサイズは全長3545×全幅1625×全高1515mmで、50年前の軽自動車サイズのフィアット500と比べるとひと回りどころがふた回りも大きいのだが、ちゃんと500に見える。比べるとゴルフベースのビートルは少々わざとらしいし、ミニはジミ。その“古さを感じさせない懐かしさ”という点では、新型500がピカイチだと思う。それは色使いの良さもあるし、なによりもデザインである。
よく見るとフェンダーの盛り上がりといい、全体のプロポーションといい、リアエンジンの旧型500と、フロントエンジンの新型500はかなり違う。だが、決め手はやはり“顔”と“丸っこさ”。人間、顔が似てれば性格まで似てるように感じるように、丸目の2灯式ヘッドライトと、横長十字グリルの位置関係が見事に500っぽいし、ところどころが丸みを帯びていて愛らしいのだ。本当に「ポチ」というか子犬みたいなデザインである。
そして予想以上の出来はインテリアだ。一応、旧型500のイメージを踏襲したというので、もっとわざとらしいレトロ調で来るかと思いきや全然モダンでポップ。確かに速度計と回転計が一体化したメーターは、ロゴといいデザインといい、ちょっとレトロ。でもそのまた中央には時計やギアボジションを表示するデジタルメーターがあって全然古さを感じさせない。
それから助手席前のパネルがボディ同色のソリッドなボードになっていて、これまたおそらくレトロデザインだと思うのだが、今見ると全然モダン。古くさいどころか新しい。それ以外の樹脂パネルは、質感といい建て付けといい、正直イマイチだが全体的にはそれを補うだけの配色と素材感がある。やはりイタリア人は料理上手。素材が普通でも、美味しそうに見せるのが上手いのだ。
一方、ちょっとガッカリしたのは走りだ。ドアの建て付けからして、まさにまんま現行パンダ。BMWミニと比べるまでもない。もちろんパンダの美点であるナチュラルなステアリングフィールやソフトな乗り心地は健在で、特に高速道路を走った時のフラットさはなかなかだ。シートもそれなりに厚みがあって座り心地はいい。
ただ、低速で荒れた路面を走ると、ややフロアがばたつく感じがするし、アクセルペダルが軽過ぎるのだろうか。街中での微妙な速度コントロールは結構やりにくい。マニュアルベースの5速セミAT、デュアロジックも多少ギクシャクする。エンジンそのものは、たった69馬力の1.2リッターSOHCとはいえ、かなり良く回るし、パワー的にはそれほど不満はないのだが、そういう“管理面”は少々劣るのだ。
加えリアシートは身長176センチの私には足元といい、頭回りといい窮屈気味。ライバルのミニはともかく、今やコンパクトカーでも広いリアシートが当たり前の昨今、この辺は物足りない気がする。
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