“素”のパナメーラ V6エンジンを骨の髄まで!
掲載 更新 carview! 文:岡崎 五朗/写真:ポルシェジャパン
掲載 更新 carview! 文:岡崎 五朗/写真:ポルシェジャパン
パナメーラのエンジンは、当初4.8リッターV8(400ps)と、同ターボ(500ps)のみだった。どちらも素晴らしい動力性能をもっているが、とくにV8ターボは、決して軽くないボディをアクセルのひと踏みでロケットのように加速させる。
しかし、パナメーラのV8ターボを手に入れるためには2061万円という対価を支払うことが必要。Sクラスや7シリーズなら12気筒モデルが手に入る価格帯だし、ベントレー・コンチネンタルも射程圏内に入ってくる。自然吸気のパナメーラSなら1374万円まで落ちてくるが、それでもおいそれとは手の届かない価格ではある。
その点、今年追加された3.6リッターV6の価格は1021万円~と、ターボの半値。絶対的には決して安くはないものの、最新トレンドに身を纏った最新のポルシェを手に入れるための対価と考えればリーズナブルではある。ましてや、実際にステアリングを握ってV6モデルのドライブフィールを満喫してからは、「V6こそがベストバイなのでは?」と思うようにすらなった。
300psを発生するV6は、カイエンのV6(VWと共同開発)とは別物で、簡単に言えばパナメーラSのV8の2気筒を削り取ったもの。400Nmの最大トルクを3750rpmで発生するこのエンジンは、下から分厚いトルクを発生しつつ、回せばポルシェらしい最高のエンターテインメント性を発揮する。回転フィール、加速フィールともに粗さはなく、きわめて高度な洗練性を備えたエンジンだ。それでいて、パワーカーブのデザインやゴキゲンなサウンドなど、計算され尽くした刺激性がドライバーのツボを憎らしいほど的確に捉えるあたりはまさにポルシェマジック。当然ながらV8やターボと比べれば絶対的な動力性能は落ちるが、その分、日本の道路環境下でもトップエンドまで回しきる=ポルシェエンジンを骨の髄まで楽しめるチャンスは多くなる。これもV6モデルのもつ意外な長所である。
さらに感心したのがフットワークだ。もともとパナメーラは、極上の乗り心地をもつ一方で、ワインディングロードでペースを上げれば上げるほど、小さく軽いクルマを操っているような感覚が強まるという不思議な特性をもっている。そこがライバルたちとの決定的な違いなのだが、フロントが軽いV6ではさらにそんなイメージが強まり、まるでボクスターかケイマンに乗っているかのような気分になるのだ。
そう、パナメーラは「ポルシェの形をした高級セダン」ではない。実際にステアリングを握って走ってみれば「高級セダンの要素を惜しみなく注ぎ込んだポルシェ」であることがはっきりと体感できるに違いない。
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