クルマがぜんぶ電気自動車になると走る楽しさは消えてしまうのか?
掲載 更新 carview! 文:岡崎 五朗 2
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自動車の黎明期、パワーソースは電気、ガソリンエンジン、蒸気機関が人気を分け合っていた。しかしガソリンエンジンの性能と信頼性が向上するにつれ、1920年頃には大きく重く扱いが難しい蒸気自動車と、航続距離が短い電気自動車は姿を消していった。次に電気自動車が脚光を浴びたのは90年代。大気汚染に悩むカリフォルニア州が、同州で販売するクルマのうち一定の割合を有害物質を一切出さない自動車にすることを求めるZEV法案を提出したのがきっかけだった。これを受け各自動車メーカーはEVの開発を試みたものの、価格や航続距離などの問題で普及の目処がたたず、この法案は骨抜きになり電気自動車の開発は事実上ストップした。
このように、過去2度に渡って実用化に失敗した電気自動車。しかしここへ来て、再び注目を集め始めているのはご存じの通りだ。その背景には、・バッテリーの進化、・新しい米国のZEV法、・中国のNEV法、・テスラのような新興EVメーカーの登場、・欧州でのディーゼル問題、・パリ協定などなど、様々な技術的政治的要因がある。どれも自動車ビジネスをしていくうえでは重要なものだが、いちユーザーの立場にたつと、どこか他人事のような気がしてしまうのも事実。なぜなら、そこにはユーザー視点が欠けているからだ。
われわれがクルマを買うとき、どんなことを考えるのか。燃費、価格、室内の広さ、使い勝手、ランニングコスト、アフターサービスといった実利的な部分はもちろんのこと、デザイン、快適性、運転のしやすさ、運転の楽しさといった点も考慮に入れながら総合的に選ぶ。なかでもクルマ好きが重視するのが運転の楽しさだろう。運転の楽しさにもいろいろな要素があるが、そのうち大きな割合を占めるのがエンジンだ。BMWのストレート6、ポルシェのフラット6、フェラーリのV12やV8といった“名機”と呼ばれるエンジン以外にも、人それぞれ思い出に残る名機があるはずで、たとえばトヨタの4A-Gや、ホンダのB16、日産のSR20DE、三菱の4G63などに、かつて心をときめかせた人は多いと思う。
そんな人たちにしてみれば、エンジンの代わりに電気モーターを積んだEVなんて「つまらない」「どれに乗っても同じでしょ」となるのかもしれない。しかしその一方で、若い世代を中心に「エンジンにこだわるなんて古い価値観だね」と考える人たちも増えている。
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