スペックV×アルファ8C 怒涛の異種混合バトル
掲載 更新 carview! 文:吉田 匠/写真:菊池 貴之
掲載 更新 carview! 文:吉田 匠/写真:菊池 貴之
一方のGT-RスペックV、あまり評判のよろしくなかった標準型シートに代わって備えられたカーボン素材のバケットシートは、日本で開発されただけあって8Cのそれより座面の幅が狭く、日本人の尻にぴったりの感じがする。と同時にこのシート、高価であることを装着者に納得させるためか、表面に張られたクッションが、この手のスパルタン系シートのものとしては妙に柔らかいが、僕はそのことに逆に軽い違和感を覚えた。
GT-Rがそもそもセダンから派生したクルマであることを示すように、着座位置は8Cほど低くないが、これも高めのダッシュボードに対して、適正なポジションに落ち着く。スペックVは911のGT3系のように、リアシートの部分からクッションが外されて2シーターとされているから、これも基本的に室内の手荷物置き場には不自由しない。
こちらは掛かり方に特別な印象を残すことなく、3.8リッターV6ツインターボエンジンは当たり前のように普通に目覚める。同じトランスアクスル配置の2ペダルMTでも、GT-Rのトランスミッションはデュアルクラッチ式。それでも発進の瞬間だけは若干ぎこちなさを感じさせるが、走り出してからの変速は8Cより素早く、しかもずっとスムーズだ。エンジンのレスポンスも鋭く、トルクの立ち上がりも申し分なし、踏めば踏んだだけ、というよりこっちが予想する以上に鋭く盛り上がり、みるみるスピードを上げていく。こちらのサウンドはクールで、アルファV8のように妙なる音楽を奏でることはないが、いかにも高性能エンジンらしいメカニカルノイズのザワメキが好き者の気分を盛り上げる。
だが、スペックVが8Cと最も顕著に異なるのは乗り心地だった。ブレーキローターのカーボンセラミック化やホイールの軽量化の効果か、タイヤの突き上げは特にきつくはないが、それでもスペックVのボディは、よほど路面がフラットでない限り絶えず上下に揺すられている。スペックVは、「サーキットやワインディングロードでのスポーツドライビングに焦点を絞り込んだGT-R」だとメーカーが説明するクルマだから、スプリングとダンパーは標準のGT-Rよりさらに締め上げられている。したがって東京から伊豆への道のり、心は騒いで気分は高揚するけれども、8Cのごとく平和とはいえないものだった。
その一方で、水野和敏チーフプロダクトスペシャリストが「世界一高品質なセラミックカーボンブレーキ」と豪語するだけあって、スペックVのブレーキは、絶対的な制動力、コントロール性の繊細さとも、明らかに8Cのそれを上回っている。
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