911カレラに盛りだくさんの軽量メニューと専用装備を追加。「カレラT」のおすすめはMTモデルだ
掲載 更新 carview! 文:木村 好宏/写真:ポルシェAG 85
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「ポルシェ 911」の軽量バージョン「カレラT(ツーリング)」のルーツは1968年に遡ることができる。その年、ツーリングカーとしてホモロゲーションを得た911は1月25日に開催されたモンテカルロラリーで優勝したのだ。それ以来、カレラTは911シリーズには欠かせないモデルとなった。
今回992に新たに加えられた「カレラT」はまさにこのスポーツスピリットに沿ったモデルである。ベースはノーマルのカレラで、搭載される3リッター水平対向6気筒エンジンの最高出力は370馬力、最大トルクは450Nmと変化はない。
ただし組み合わされるトランスミッションは7速MT(8速PDKも搭載可)で、このモデルのシンボリックなアイコンである空車重量は1470kgに抑えられている(※911カレラは8速PDKで1530kg)。
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このダイエットは7速MTの採用に加えて、リアシートの取り外し、スポーツシート、軽量バッテリーやガラス、そして防音材の簡略化などで達成されている。一方で走りに徹するための装備、PASM(ポルシェ・アクティブサスペンション・マネージメントシステム)、PTV(ポルシェ・トルク・ベクタリング)、スポーツクロノパッケージ、10mmローダウンしたスポーツシャシー、スポーツエキゾーストシステム、さらに光沢チタニウムグレーのカレラSホイールと、フロント245/35ZR20、リヤ305/30ZR21サイズのタイヤが標準装備されている。
外観では、スポイラーなどの大げさな空力的付加物はないが、ドアミラーや前後のフィニッシャー、そしてウィンドートリムなどはアガートグレーで仕上げられ、望めばドア下部を911カレラTのロゴで飾ることができる。
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個人的には未だに慣れないリトラクタブルドアハンドルを引いて、4ウェイの電動調整式ドライバーズシートに腰を落とす。左手でイグニッションキーを捻ると、聞きなれたボクサーの咆哮がスポーツマフラーを介して耳に届く。およそ10mmカットされたシフトノブをローに送り込み、軽いクラッチを離すと「トヨタ カローラ」並みの重量に2倍のパワーを与えられた911カレラTは軽快な加速を開始する。それは私がかつて経験した単発セスナのような感覚である。
昨今称賛されているBEVのように振動を伴わない無味乾燥なものではなく、息づかいのような6気筒ボクサーのビートを伴っている。頭打ち感はなく、シフトアップする度にどこまでも続く。スピードメーターの数字はあっという間に米国ハイウェイの法定速度の2倍に達してしまったので、ブレーキングで時速70マイルまで落とす。
カリフォルニア州では多くのドライバーが時速10マイル以上のオーバースピードでかっ飛ばしているが、交通警察は上空から監視している。特に私の乗っているのはポルシェ、しかもボディカラーはパイソングリーンという派手な色なので要注意だ。
私が向かったアンヘレス・クレスト・ハイウェイ(エンジェルス・クレスト・ハイウェイ)のワインディングロードには「シボレー コルベット」や「ダッジ チャレンジャー」、さらには「スバル STI」などの走り屋がウジャウジャいるが、911カレラTでは向かうところ敵なし、皆さん道を譲ってくれた。
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市街地戻って気になったのはアイドリングストップからの再スタートで常に大きな機械的なショックを伴う。ポルシェは重量増加を理由に、頑なにマイルドHEVシステムを採用しないために起こる現象で、軽量化を売りにするこのTモデルでは特に論外なのか分かるが、1千万円を軽く超える高級車にゴルフよりも安っぽい作動は全く似合わない。もっともスイッチオフしておけば済む話で、さらにPHEVあるいはBEVへと進化すれば消え去る問題だが、私は納得が行かない。
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また今回のテストでは8速PDK(車両重量=1505kg)にも乗ったが、こちらはMTに対して35kgの重量増なので標準仕様の911カレラ(PDKモデルの車両重量=1530kg)とほとんど変わらない。Tモデルを選択するのであれば7速MTを選択すべきである。
このライトウィエトなカレラTの価格だがポルシェジャパンは7速MTと8速PDKのどちらでも1640万円と発表しており、ノーマル版カレラ(1503万円)の137万円高となっている。既に予約注文を始めているが、デリバリーは来年の春先になるだろう。
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