歴史にもしもはない……。 ただ、かつて切り捨てられたこんな日産車が今あったらいいな、と思う人も多いはずだ。
バブル期に登場して、カルロス・ゴーンが日産復活を期して打ち出した「日産リバイバルプラン」による車種整理と、これに伴うディーラー再編などによるコストカットによって、さまざまなモデルが儚く消えていった。
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これが現在の日本市場軽視につながっていることは見逃せない。日産ファンの選択肢を減らすことは、日産にとって本当によかったのか、悪かったのか?
時代を彩った多くの個性的な車種を振り返って、もしも復活すれば日産の日本市場での“チカラ”になりそうなモデルを挙げてみた。
文/岩尾信哉
写真/NISSAN
■車種拡大そして日産リバイバルプランの功罪とは?
サニーとパルサー、ブルーバードとプリメーラ、ティーダとノート、ローレルとスカイライン、つまりはバブル期に数多くあった兄弟車が、1999年10月にカルロス・ゴーンが実行した日産リバイバルプランは、工場の閉鎖をはじめとして、販売車種の統合・整理によって、数多くのモデルが消え去っていった。
日産の日本市場でのコアモデルであるスカイラインでさえ、危うくインフィニティブランド(現行モデルはインフィニティのバッヂが付いているが)のモデルとしてその名を失いかけたほどだった。
その是非はともかく、日産が1999年のルノーとのアライアンス以降、ビジネスを変えたことは確かだ。1980年代のバブル期に日産社内で始まった、1990年代までに技術世界一のクルマ作りを目指すという「901運動」によって生まれたスポーツ(あるいはスポーティ)モデルは、ことごとく排除されたことは事実として残る。
日産のビジネスは北米市場が基本とはいえ、「901運動」のコンセプトは多分に欧州メーカーのモデルを意識したもので、多くの日本の日産ファンに広く受けいれられた。
ただし、パルサー三兄弟などにみられるラインアップ拡大の手法をいたずらに追ったことなどでコスト増加が生じるなど、日産はバブル経済崩壊とともに経営難に陥っていった。
スカイラインから独立したGT-RやフェアレディZの登場など、派手な打ち上げ花火はあったものの、ルノーによる買収後は、日産がかつてはラインアップ全体に反映されていたスポーツ性や個性は、大規模な車種整理とともになりを潜めていった。
■パルサーGTI-Rのようなスポーツモデルを復活させよ!
1990年に4代目パルサー(N14型)のラリーフィールドでの活躍を狙って開発された「GTI-R」はFIAのグループAホモロゲーションモデルとして誕生。2L直4ターボのSR20DET型エンジンは4連スロットルや大型化されたターボ/インタークーラーを備え、230ps/29.0kgmを発生。R32GT-Rにも採用されたナトリウム封入バルブやアテーサ・フルタイム4WDシステムやビスカスLSDなどを装備。ちなみに発売から30年が経とうとするのに、生き残った走行距離の少ない程度の良い車両は中古車価格で150万~200万円。新車価格が234万円というから依然として高価格を維持
まず、声を大にして言いたいのは、日産が過去のスポーツモデルをストレートに復活させること。あるいは海外版の後継モデルを昔の名前で復活させるというやり方はできないだろうか。
たとえば、ラリーウェポンとしてその名を挙げたパルサーGTI-Rを海外版のパルサーにGTI-Rグレードを復活させて、逆輸入するといった手法はどうだろうか?
むろん、ルノーのメガーヌR.S.のようなホットモデルが身内にいるのだから、事はそう簡単にはいかないのだろうが、手の届きやすいスポーツモデルはあって然るべきではないだろうか。
というより、ルノーにスポーツモデルを好き勝手にさせて、なぜ日産から出さないのか、不思議に思っている人も多いだろう。
日産のコンパクトカーとして、サニーは北米、パルサーが欧州、それぞれの市場を担うモデルとして位置づけられていたが、初代(N10型)の登場が1978年まで遡るパルサーは、6代目(N16型)が2006年に一旦ラインアップから消えていた。2013年にオーストラリアでパルサーの名で復活したが、その実体はタイ生産のセダンのブルーバードシルフィと5ドアハッチバックのアルメーラの共通仕様だった。写真は2014年、欧州で“正式に”復活したパルサーのNISMO版
■記憶に残り続ける「ブル」と「SSS」の復活を!
ブルーバードの高性能モデルに位置付けられた「SSS(スリーエス)」。写真は1970年に追加された1800SSSのクーペ。排気量の拡大で最高出力は115psに引き上げられた
U12型ブルーバードSSS-Rは、ラリー競技用ベースとしてオーテックジャパンがメーカーからの公認を経て1987年から受注生産で販売された
1959年に誕生、2001年まで日産を支え続けたブルーバードは、晩年、2世代にわたってブルーバードシルフィという名で存続したが、2012年に完全にその名が消滅してしまった。
“ブル”の歴史の中で、ひときわ輝くグレードの呼称として存在したのが、「スーパー・スポーツ・セダン(サルーン)」、通称「SSS」(スリーエス)というグレードだ。
410型のマイナーチェンジの際に生まれたSSS(スリーエス)の呼び名は積極的にスポーツ性を謳うことで、510型へと続くスポーティモデルの流れを築き、ラリーフィールドで活躍とともに、日産のモータースポーツ活動のイメージを備えた呼び名となった。
SSSの名はその後もシルフィの名がつく前のU14型まで、グレードとして存在したのだから、充分なネームバリューがあることは日産も充分認識しているはず。
たとえば、ブルーバードの復活に届かずとも、たとえば北米市場で販売されているミドルクラスセダンであるアルティマに採用の可変圧縮比付き直4「VCターボ」搭載車を「SSS」の名を与えて逆輸入するというのはどうだろう。往年の日産ファンなら、食いつくのではなかろうか?
2018年4月のニューヨークショーで発表された日産のミドルセダン、アルティマ。ボディサイズは全長4901×全幅1850×全高1447mmと、全長4880×全幅1840×全高1445mmのレクサスGSに近いサイズ。エンジンは可変圧縮比の2L、VCターボを搭載している
■初代セフィーロを見習い、デザイン重視の日本専用セダンを!
初代は いわゆる“鬼キャン仕様”まで現れ、FRセダンとして個性的だった。対して2代目以降はFWDのミドルクラスセダン(ワゴン)となって、日産を支える中核モデルとなった
1988年9月に発表された初代(A31型)の井上陽水の「くうねるあそぶ。」のキャッチコピーが懐かしい、中型セダンであるセフィーロ。
スカイラインのスポーティ、ローレルのラグジュアリーに対して、スタイリッシュをキーワードに掲げた。
ボディタイプは4ドアセダンに1本化し、そのうえでフロントバンパーからキャビン、リアバンパーに至るまで、豊かで流れの美しい面を個性ある表情でまとめあげ、Cd値は0.32というクラストップレベルの数値を実現。
エクステリアはヘッドランプに4灯式プロジェクター、フロントグリルにクリスタル製カバー、ドアハンドルに流線型タイプを採用するなど、各部のアクセントにこだわった。
エンジンはRB20DET型2L、直6インタークーラー付きセラミックターボ(205ps)を筆頭に、RB20DE型2L、直6(155ps)、RB20E型2L、直6(125ps)という計3ユニットを用意した。
組み合わせるトランスミッションは5速MTと4速ATの2タイプで、MTも設定されていたことが後のドリフト仕様として重宝された所以でもある。
また初代セフィーロの特徴は 「セフィーロ・コーディネーション」と呼ぶオーダーメイド感覚のシステム展開。
ユーザーは3機種のエンジン、2機種のトランスミッション、3タイプのサスペンション(マルチリンク式リアサスペンション/同+DUET-SS/同+HICAS-II)、3種類の内装素材、2種類の内装色、9種類の外装色のなかから自由に組み合わせを選択できた。
存在感に溢れるセダンを生み出すためのきっかけとして、初代セフィーロのコンセプトにはヒントがある気がする。
居住性を犠牲にしない、素晴らしいデザイン。エンジンは直6で、MTも用意する。直6のFRが理想だが、現実的にはFFになるだろう。
日産には中国市場はティアナに任せて、ここはぜひとも勇気を持って初代セフィーロのようなスタイリッシュな日本専用セダンにぜひトライしてもらいたい。
■走りのステーションワゴン、ステージア
1997年に登場したステージア260RS。280psのRB26DETTを搭載。ワゴンのGT-Rと呼ばれた
1996年に登場したFRステーションワゴンであるステージア(WC34型)は、走行性能を積極的に主張するモデルだった。
初代は位置づけとして、当時のローレルの型式がC34型だったので、ローレルのステーションワゴンというべきか。
ともあれ、6気筒(ターボ)搭載のFRワゴンというのはいまでも魅力的なスペックであり、輸入車を含め、将来の直6モデルの採用を打ち出したマツダの存在もあって、このコンセプトの推移を注視しているのはメーカーとステーションワゴンユーザー双方といえるかもしれない。
初代の全長4800×全幅1755×全高1490mm(標準仕様)、ホイールベースが2720mmというサイズ感は、高級ワゴンとして、日常での荷物を扱ううえでは必要となるスペックだろう。
エンジンは初代のRB型直6の2L/2.5L/同ターボから、2001年から登場した2代目(M35型)では、直噴ガソリンV6の2.5L/3LのVQ25DD/30DD型エンジンを設定。
専用エンジンとしてVQ25DET型も用意されるなど、走りにこだわる日産ファンにはインパクトを与えたが、2004年のマイナーチェンジ後は、VQ25DE型とともに3.5L自然吸気のVQ35DE型を与えられた。
現在の日本市場では、スバルとマツダが海外市場を見据えつつ、ステーションワゴンが用意され、ワゴンボディをもつ独立したモデルは日本車ではレヴォーグのみ。
最近聞かなくなったプレミアムワゴンを輸入車ばかりに任せておく手はないはず。仕立てと売り方の工夫に注力すれば、決して勝ち目がない戦いにはならないのではないか。
■前3人、後ろ3人乗りのティーノ
1998年12に登場し、2003年に生産終了した1代限りで終わってしまったティーノ。ボディサイズは全長4270×全幅1760×全高1610mm
パッケージングや使い勝手が良くても、モデルとしての立ち位置がマーケットによく理解されないと、商品としての訴求力が生み出せないという、不人気車が絡め取られがちな“悲しい鉄則”は、残念ながらティーノ(1998~2006年)にも当てはまってしまう。
前席3人、後席3人の6人乗りのコンセプトとして、ミニバンとステーションワゴンの機能性を併せ持つモデルとして登場したティーノ。ホンダでいえば、同じく1代限りでなくなった前席3人、後席3人の6人乗りのエディックスがある。
前席の中央席は小さく、エディックスの独立3座(中央席は小ぶりだが)に比べると狭いティーノのシート
いいとこ取りは難しいとはいえ、スタイリッシュかつ6人乗りの利便性を備えるよう巧みに仕上げられれば、ヒットする可能性はあるはず。
極論すれば、いわばマーケットに常に存在し続けて“しまっている”、隠れた「鉱脈」なのだ。
■元祖着せ替え自由なエクサ
1986年10月、パルサーから独立したエクサとしてデビュー。 ボディ形状はノッチバッククーペと、クーペの2種類。両者の車体はCピラーごと開く脱着式リアハッチ以外は同一形状であり、交換が可能なデザインコンセプトだった。しかし、日本国内販売仕様では登録上のボディ形状と違ってしまうためクーペタイプ及びキャノピータイプを独立した車種とし、各ハッチの取り付け部に互換性を持たせなかった。 実際にはボディに固定するパーツの左右形状が異なっているだけなので加工により交換は可能だが構造変更が必要だった
北米市場では“セクレタリーカー”(女性が自らハンドルを握るクルマ)と呼ばれるカテゴリーに属する、パルサーEXAは1982年に誕生した。
初代はパルサーエクサ(EXA)と呼ばれたように、N12型パルサーをベースとして仕立てられたノッチバッククーペは、スタイリングではリトラクタブルヘッドランプが印象的で、オープン仕様のコンバーチブルまで限定発売された。
1986年に登場した2代目(KN13型)はパルサーシリーズから独立、単に「エクサ」と呼ばれるモデルとなった。
日産の北米デザインスタジオ「ニッサン・デザイン・インターナショナル:NDI」が手がけた。
いかにも北米市場を意識したTバールーフの設定とともに、クーペとキャノピーの“着せ替え”可能な斬新なデザインは話題となった(1990年に生産終了)。
日本仕様では、取り付け部の形状が異なり、加工が必要となって、構造変更の申請が必要なようだが、シンプルなデザインとともに、現在の樹脂材料などを利用した軽量化技術を使って、コンセプトを復活させても面白いはず。
■3列7人乗りのキューブキュービック
左右非対称デザインで好評を博した2代目キューブの3列シート7人乗りがキューブキュービック。ボディサイズはキューブの全長3730 × 全幅1670 × 全高1540 mm、ホイールベース2430mmに対してキューブキュービックは 全長3900 × 全幅1670 × 全ている高1645 mm、 ホイールベースは2600mm。キューブに対してホイールベースが170mm延びている
丸みを帯びたスタイリングとデザイン性の高いインテリアなど、好評を博した2代目のキューブで設定された、キューブキュービックは、3列シートの7人乗り仕様として登場した。
全長3900×全幅1670×全高1645mm(ホイールベース:2600mm)というボディサイズの2代目がもつ丸四角いフォルムと後部の左右非対称の仕立てを基本に、インパネシフトを採用したインテリアなど、まさしくデザインの勝利というべき出来映えだった。
あくまで非常用として3列目シートを得て、使い勝手を向上させた“キュービック”が、3代目でも設定されれば、シエンタといったライバルに伍して戦うことができるのではと思う。
全長3900mmというコンパクトなボディに3列シート7人乗りを設定したキューブキュービック。3列目シートは狭くても子供を持つファミリー層には重宝するのではないだろうか
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