脱エンジンできない日本の軽自動車はかつてのガラケーのように駆逐される! は本当か?
掲載 carview! 文:山本 晋也 109
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自動車業界が「100年に一度の大変革期」と呼ばれるようになって久しい印象もありますが、わかりやすい変革のひとつが脱エンジン&電動化です。
伝統的な大手の自動車メーカーでも、早ければ2030年代にはエンジン車の量産を止めるというロードマップを描いている会社は少なくありません。国産メーカーも2050年をめどにカーボンニュートラル化を目指すケースが多いようです。
カーボンニュートラル化=脱エンジンというわけではなく、水素エンジンや人工ガソリンなど、燃料側でカーボンニュートラルをする選択肢もあるとはいわれますが、エンジンが生き残る余地を明確に残している企業は少数派。多くの自動車メーカーは基本的に脱エンジン・EVシフトを明確にしつつあります。
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脱エンジンの流れで指摘されるのは、旧来型ビジネスモデルのアドバンテージがなくなるという話です。エンジンに関する設計・製造の知見が不要になることで新興メーカーが伸びる余地が広がるという指摘があります。実際、EV専業メーカーである北米のテスラ社は確実にシェアを広げ、成長しています。大変革期にはエンジンを作っていることは足かせになるという見方もあるほどです。
<写真:テスラ モデル3>
こうした業界勢力図の変わりぶりを見ているとケータイ電話を思い出すという声は以前から言われているところです。日本では「ガラケー」と呼ばれたタイプのケータイ電話が主流だった時代には国産メーカーがしのぎを削っていましたが、スマートフォンが主流になると海外メーカーの勢いに駆逐されたという歴史がありました。
同様に、EVシフトが進むことで国産メーカーのアドバンテージが失われていくと、海外ブランドのEVにシェアを奪われるということもないとはいえません。とくにスマートフォンでは中国製の存在感が増しています。中国ブランドでなくとも、たとえばiPhoneは主に中国で組み立てられています。大きな流れとして、中国から世界へスマートフォンが供給されているともいえます。
同様のことは自動車業界でも起きるのでしょうか? すでに日本向けのテスラ車は中国・上海で作られているものが多くなっていますから、中国製のEVは日本でもそこそこ認知されているといえるかもしれません。
最近では中国の最大手EVメーカーであるBYDが日本に本格参入していることも知られています。創業から30年足らずというBYDですが、いまやEVについては世界トップの生産規模を誇る大メーカーに成長しています。
<写真:BYDが9月に日本で発売した新型EV「ドルフィン」>
BYDは日本においてもディーラー網を整備することでユーザーとの接点を確実に増やす方針を掲げているようですし、日本政府の補助金についても最高額が支給されるような仕様に商品をブラッシュアップするなど、「本気で売る」気でいることは明らかです。
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となると、スマートフォンによって日本のガラケー市場が事実上消えてしまったように、いまは問題なく売れているようにみえる国産のエンジン車も消滅する未来が待っているのでしょうか。
また、BYDのようなトップブランドだけでなく、中国市場には数多のEVスタートアップ企業が存在しています。そうしたEVメーカーが作っているシンプルかつ安価なモデルが日本に入ってくることで、軽自動車をボトムとする市場の構造が変わってしまうことも考えられます。軽自動車の下にもっと安価なスモールEV市場が誕生すると、今やコンパクトカーを超える価格帯の軽自動車は一気に古い乗り物として駆逐されるかもしれません。
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ただし、スタートアップのEVメーカーが日本に進出する可能性は低いといえます。日本で売るための認可をとったり、右ハンドル仕様を作ったり、さらにいえば販売網を構築するという手間を考えたときに、日本市場にそれだけのリソースを割く価値があるとは思えないからです。
BYDクラスの企業規模であれば、日本市場はまだまだ攻略すべき価値があるかもしれませんが、スタートアップが目指すべきは成長市場でしょう。
さらに、ご存じのように経済成長のスピードが極端に遅い日本で売るような商品は、海外よりも日本で製造したほうがコストにおいても有利となりつつあります。あえて日本市場にチャレンジする価値があるかといえば疑問です。
とはいえ、ユーザーとしては海外から安価なスモールEVが日本上陸することは歓迎すべきでしょう。選択肢が増えるのはユーザーメリットですし、軽自動車より安価なスモールEVが増えてくれば、軽自動車の価格を下げる圧力になって、ユーザーが買いやすいモデルが増えていくであろうことが期待できるからです。
<写真:日本で圧倒的な人気を誇る軽自動車「N-BOX」>
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写真:ホンダ、スズキ、BYD、テスラ
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