マツダCX-60は“気に入ったら買い”でOK!? コスパも十分【オーナーの本音】
掲載 carview! 文:工藤 貴宏 250
掲載 carview! 文:工藤 貴宏 250
――デザイン性の高さやマツダが威信を賭けて作り上げたFRベースの新プラットフォーム、直6エンジンや人馬一体の走りなど、何かと話題を振りまいているマツダの最新SUV「CX-60」。巷ではポジ・ネガ両面の様々な評判が聞こえてくるが、実際のオーナーの本音はどうなのか。
「CX-5」からCX-60へと乗り換えた自動車ジャーナリスト、工藤貴宏氏の本音をお伝えする。
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※写真は「CX-60 XD エクスクルーシブモード(4WD)」
マツダの最新SUV「CX-60」がボクのもとへ届いた。これまで5年弱乗っていた「CX-5」からの乗り換えで、CX-60を購入したのである。
それにしても、CX-60は話題に事欠かないクルマだ。
たとえば、新設計のプラットフォームは、日産が実質的に乗用車用のエンジン縦置きプラットフォームの新規開発を凍結し、トヨタは後輪駆動にこだわっていた「クラウン(クロスオーバー)」がエンジン横置きでFFをベースとする時代にもかかわらず、CX-60はエンジン縦置きの後輪駆動を選択。
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さらに、これまた新開発となるディーゼルエンジンは、排気量3.3Lの直列6気筒という大きさ。他社とは違うのだ。
「この時代にFRプラットフォームで大排気量6気筒エンジンなんてどうなっているの?」
という声が一部、というよりは多方面から聞こえてくる。しかし、そんな他メーカーの動向になびかない独自路線も“我が道を行くマツダ”らしくていいじゃないか。
気に入ったら買えばいい。それだけのことである。むしろ、こういうメーカーがあるからこそクルマは面白いといっていい。
※写真は「CX-60 XD エクスクルーシブモード(4WD)」
というわけでボクはCX-60を買った。その理由を端的に言えば、「6気筒ディーゼルエンジンを堪能したかったから」に尽きる。
前所有車CX-5でディーゼルエンジンを選択し、その力強い走りと燃費の良さには驚かされた。だから、その次のステップとしてマツダの新しいディーゼルエンジンを積むクルマを選んだのだ。
300万円台前半から6気筒ディーゼル搭載車を買えるなんて、夢みたいな話じゃないか。欧州の6気筒ディーゼル搭載車なら、その倍額を払ってもまだ手が届かない。ハッキリ言ってCX-60のディーゼル車(のモーター無し=非ハイブリッドモデル)は激安である。
選んだグレードは、「XD」と呼ぶモーター無しディーゼルでは最上級となる「エクスクルーシブモード」。駆動方式は後輪駆動とした。ついでに言うと、ボディカラーは「プラチナクォーツ」でインテリアはピュアホワイトだ。
>>CX-60のグレード一覧はこちら
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※写真は「CX-60 XD エクスクルーシブモード(4WD)」
オーダーから半年以上が経過して手元に届いた“マイCX-60”の第一印象は「やっぱり大きい」だった。
自動車ライターという仕事柄、購入前にも実車を見ているし、メーカーが取材用に貸し出す車両の試乗だって、これまで幾度となく、それこそ合計で1000キロに届きそうなほどしている。
しかし、あらためて自宅の駐車場に置くと、前所有車のCX-5よりひとまわり大きいことを強く強く実感するのだ。車体の幅なんて45mmしか違わないのに、明らかにCX-60のほうがワイドに感じるのだから人間の感覚ってかなり凄いんだなとも思ったりもする。まあ、実際のサイズの違いを知識として知っていることが潜在能力の助けとなっているのかもしれないけれど。
>>CX-5のボディサイズ詳細はこちら
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CX-5と比べて感じたことと言えば、CX-60はとにかくボンネットが長い。これは6気筒エンジンを収めるためだから仕方がないといえばそういうことだし、さらにいえば兄弟との関係もあるのだろう。
前輪とAピラーの位置関係は先日アメリカで発表された「CX-90」や今年の終わり頃には発表されるであろう日本向けでCX-60の兄貴分となる「CX-80」など3列シートモデルと同じはず。だから、3列モデルにおけるプロポーションのバランスを考えると、このくらいボンネットを長くしたほうがいいのかもしれない。
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面白いのは、そんな長いボンネットのいっぽうでキャビンの前後長に関してはCX-5とあまり変わっていないこと。後席空間もラゲッジスペースもCX-5に比べるとちょっとだけ広いが、CX-5に対する車体の大型化に比べればキャビン内の広さは大きく違うわけではない。
ボクは「CX-5と同じくらいあれば問題ではない」という考え方だから気にならないけれど、もし実用性重視ならほかの選択肢も考えたほうがいいかもしれないと思う。たとえば「CX-8」とか。
※写真は「CX-60 XD-HYBRID プレミアムモダン(4WD)」
話しをスタイリングの話に戻すと、自分の愛車を見て残念に感じた部分が2つ。ひとつはフロントフェンダーのバッジ、もうひとつはタイヤ周辺と車体下部の樹脂部品である。
まずフェンダーのバッジ(サイドシグネチャーガーニッシュ)。メッキで飾った「プレミアム」系や塗装を施した「SPORT」系に比べると「エクスクルーシブモード」をはじめとする純エンジン車のバッジは無塗装の樹脂でなんとも質素だ。
グレード構成とはヒエラルキーを与えるためのものだから差別化が必須だというのもわかる。でも「エクスクルーシブモード」といえば、CX-5やCX-8では最上級グレードとなる仕様。にもかかわらず、「バッジがあまりにも質素すぎやしませんか?」と開発陣に問いたい気持ちでいっぱいだ。
>>CX-5のグレード詳細はこちら
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タイヤ周囲と車体下部の樹脂パーツも塗装のない樹脂素地で「こういうのがSUVらしい」という言い方もあるが、個人的には「プレミアム」系や「スポーツ」系のようなボディ同色が好きだ。ちなみに、その部品だけ上級グレード用の塗装済みを取り寄せて装着すればいいかといえば、バンパーの形が違うため不可。なかなかうまくいかないものだ。
ただ、そんな沈んだ気分も室内に乗り込めば切り替わる。
内装の上質さは最上級グレードではない「エクスクルーシブモード」でもハイレベルで、満足感は高い。表皮にナッパレザーを張ったシートもそうだが、ダッシュボードの表面の仕立てなどもさすがでプレミアムモデルを実感。
欲を言えば「プレミアムモダン」のダッシュボードに採用される“掛け縫い”のデコレーションパネルは欲しいところ。しばらく乗ってみて「どうしても欲しい」となれば、その時は部品として入手して交換することも考えようかと思っている(実際に装着できるのかは確認していないが)。
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巷で話題の乗り心地に関しては、決して「優れている」とは言い難い。愛車のサスペンションは「4WD向けよりは乗り心地が向上している」と言われる後輪駆動用のタイプだが、それでも衝撃を乗り越えた際の車体の揺れなどは世間一般水準よりも多めだ。
しかし、愛車として乗っていれば、意外に慣れてくることはお伝えしておこう。ちなみに、クルマに詳しくない(でも本音で語ってくれる)知人を何人か乗せて乗り心地の感想を聞いてみたところ、不快という人が少ないのはちょっとした驚きだった。先入観なく感じると、クルマ好きの印象とはまた違ったものになるのかもしれない。
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※写真は「CX-60 XD エクスクルーシブモード(4WD)」
さて、走っての第一印象もお届けしよう。
まず動き出しは、正直なところ「やっぱり重さを感じるな」という気持ちになる。停止状態から最初のタイヤひところがりに重さを感じるのだ。
とはいえ、トルクが500Nmもあるディーゼルエンジンのおかげで加速は力強い。そのうえ、燃費重視としたことでドイツ勢ほど爽快ではないといえ、直列6気筒らしいフィーリングはやはり4気筒とは違う心地よさ。
同じエンジンでもマイルドハイブリッドに比べると2500回転を超えたあたりからの中間領域でググッと前へ出る感じが少し弱い(これはモーターの働きというよりも中間回転域で発生するトルクが1割少ないからだ)が、十分に速いので文句はない。ちなみに、日常領域でエンジン回転が2000回転を超えるのは稀である。
気になる燃費は、やっぱりいい。CX-60のディーゼル車のWLTCモード燃費はマイルドハイブリッドだと21km/Lをオーバー。モーターがないピュアエンジンでも19km/L台と、車両重量を考えると驚くしかない領域だ。
その最大の理由は「燃費をよくするために大排気量を選んだ」という常識を超えたロジックのエンジンだが、確かに街乗りでも約15L/kmと燃費は良好すぎる。マツダはなんと凄いクルマを作ってしまったのだろうか。5月に5万7000円の請求が来る自動車税に関しては忘れておこう……。
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※写真は「CX-60 XD エクスクルーシブモード(4WD)」
そんなCX-60は愛車として満足できそうか。数年にわたって愛することができるだろうか。
結論はもちろん「YES」である。実際に愛車としてみると、マツダが「オーナーを満足させるためにしっかりと作り込んできた」ということがきっちり感じられる。走りも内装の質感も、いいものを買った感に満たされているのだ。
さらにいえば、内容の充実度のわりに価格控えめでコストパフォーマンスも優れていると断言できる。
写真:小林俊樹、マツダ
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