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河口まなぶカレラ4試乗 ポルシェは何が凄いか?

「カレラ4ならでは」の感覚

話は変わって僕はこれまでに996のカレラ4とカレラ4Sという2台を乗り継いだ経緯がある。それだけに今回、997カレラ4シリーズの一新は実に興味深いものだった。

新たな直噴エンジンであるDFIと2ペダル自動7速MTであるPDKについては、既に吉田匠さんや清水和夫さんが詳しく記しているが、今回のカレラ4シリーズにおけるトピックはDFI+PDKに加えて4WDシステムまでが一新され、従来のビスカスカップリング式からターボと同じ電子制御の多板クラッチ式センターデフを持つPTM(ポルシェ・トラクション・マネージメント)へと置き換えられた。これも匠さんのレポートに詳しい。

さらに付け加えるならば、カレラ4シリーズは今回PTMとともにリアに加速時で22%、減速時で27%のロック率を持つメカニカルLSDを標準装備したこともトピックだろう。

時間を遡って今回のカレラ4シリーズの試乗会で初めて走らせた印象を辿っておくと、走らせた瞬間からカレラ4らしい感覚があると感じた。実際に僕は新型カレラには触れていないのだが、これまで996カレラ4&4Sを乗り継いだ経験から来る「カレラ4ならでは」の感覚に近いものがあった。

それは何かといえば、フロントにも駆動系を持つがゆえのフロント回りの重さ。カレラ4シリーズはわずかだが、カレラに比べ鼻先が重い。ただこれは決してカレラに対してネガティブな要素にはなっていない。

カレラに比べフロント回りが重くなるカレラ4シリーズは、走行時にステアリングを通して鼻先が落ち着きを伴っていることを教えてくれる。手の平にわずかだがカレラにはない重みが存在し、カレラよりもステアリングからフロント回りの重厚感が感じられるのだ。

そしてこれは特に雨の日に絶大なる頼もしさを感じる要素になる。ご存知のように911はRRゆえ前後重量配分で前が軽いため、空力やサスペンションが改善されスタビリティも大幅に高まった997でも、ごく稀にフロントの軽さがステアリングを通して伝わることがある。しかも911の場合ステアリング・フィールは世界最高峰にあるためそれを感じ取りやすい。だから例えば雨の日のコーナリング時のアクセルオンという状況では、フロントが一瞬軽くなり心許ない感覚を受けることもある。そうしたシーンでフロントが重いカレラ4シリーズは実に安心して操舵できる頼もしい前輪の感触を伝えてくれる。

それが新たな997カレラ4シリーズでも健在だったわけだ。実際に同乗した、カレラを試乗済みの編集者の方に確認すると「確かにカレラの時よりもステアリングが若干重めに感じる」という。しかも新たな997カレラ4シリーズの場合、996系に比べればもちろん、前期型に比べてもさらに乗り心地は洗練されているため、流して走ると本当に良く出来たセダン並みに滑らかかつ重厚な感覚を伝えてくる。もちろんこれをして日常域での911らしさが希薄になった、と記すこともできるが、僕はむしろ歓迎と思えた。

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