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新型フィットRSは気持ちのいい爽快な走りが魅力。これぞ“ちょうどいい”スポーティフィットだった

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伝統のRSが復活

ホンダは10月6日、コンパクトカーの「フィット」をマイナーチェンジ。7日より販売を開始した。デザインの変更、ハイブリッドシステム「e:HEV」の改良などがトピックスだが、注目は2代目、3代目(先代)に設定されていたスポーティグレード「RS」が復活したことだ。

RSは1972年に発売された初代「シビック」から採用された伝統のグレードで、その名は「ロード・セーリング」を意味する。

ホンダによるとRSは「あたかも、道路を帆走するように、堂々と、ゆったりと、遠くへ」がコンセプトで、サーキット走行も視野に極限のパフォーマンスを追求した「タイプR」とは対照的に、日常領域における走りの気持ちよさや楽しさにフォーカスしたグレードだという。

なお、従来あった「フィットネス」由来のスポーティグレード「NESS」は、今回のマイナーチェンジでカタログ落ち。ホンダ渾身のギャグが盛大に滑ったという伝説は残ったが、歴史あるRSの方がシンプルで多くのユーザーにとってわかりやすいだろう。初期受注では2割を超えるオーダー入っているとのことだ。

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細部までこだわった専用デザイン

今回追加されたRSは、「アグレッシブ・スポーツ」をデザインコンセプトに、前後の専用バンパーやサイドシルガーニッシュ、専用グリルや大型リアスポイラーなどを装備する。

デザインの担当者によると、車高を落とさずにロー&ワイド感を強調することでスポーティさを演出しながら、CFD解析や実走テストを繰り返し機能美も追求したとのこと。

「リアもスムーズに空気が抜けるようディフューザー形状を煮詰め、ラジエターとATFクーラーにきちんと風を当てるためにバンパー内部に導風板を仕込むなど、見えない部分まで手を入れている。

“見た目だけ”のエアロではなく、フロントから取り入れた空気をタイヤハウスから抜く『エアカーテン』を仕込むなど、同時期に真横でデザイン開発をしていた『シビックタイプR』で培ったエッセンスも取り入れている(担当者)」

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センタリングのしやすい3本スポーク

インテリアは、グレーを基調とした中にイエローのアクセントを配した仕立てとなっている。スポーティと聞くと赤やオレンジなどを連想しがちだが、RSはあくまでも日常の延長線上でのスポーティがコンセプトなので、どんなシーンでも似合うイエローが選ばれたとのことだ。

ちなみに、インテリアとの統一感を演出し立体感を表現するために、RSのイメージカラー「スレートグレー・パール」には微量の黄色い塗料が混ぜ込んであるという。ニュアンスカラー程度でほとんどわからないレベルだが、光が当たるとうっすら発色するとのことなので実車でチェックしておきたいポイントだ。

また、4代目フィットは街中での頻繁な切り返しに配慮した2本スポークのハンドルを装備しているが、RSでは「ヴェゼル」のものをベースにイエローステッチを配した3本スポークの専用品へと変更されている。これは、スポーツ走行時のセンタリングのしやすさを考慮しての採用だという。

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爽快で気持ちのいい走り

新型フィットに搭載されるハイブリッドシステム「e:HEV」は、従来よりモーターの最大出力を10kW向上させ90kW(123馬力)となった。さらに、アクセルレスポンスを向上し、エンジンをより高回転まで引っ張るよう制御を改めることでキレのいい加速感を演出するなどのチューニングが施されている。

さらにRSでは、これらのチューニングに加え足回りを専用セッティング。スプリングとスタビライザーを固くしてロールを抑え、ダンパーの減衰力を上げることで、スポーティかつ上質で気持ちのいい走りを目指したという。

試乗コースである箱根のワインディングでは、ドライバーの意図に沿って遅れなしにクルマが反応する素直なハンドリングを見せた。ドライブモードスイッチでRS専用の「SPORT」を選択し、減速セレクターで回生ブレーキを強めれば、アクセルのオン・オフでメリハリの効いたスポーツドライブを楽しめる。

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“ちょうどいい”スポーティ

ただ、1点注意しておきたいのは、RSのコンセプトは再三述べている通りあくまで”日常の延長線上”ということだ。走りの味付けも、街乗りから郊外のワインディングを”気持ちよく走る”点にフォーカスされている。

筆者は最初、スポーティなコンパクトカーと聞いて「スイフトスポーツ」や「GRヤリス」のような軽量コンパクトなボディにハイパワーエンジンを搭載した刺激的な走りを期待していたのだが、それらと比べフィットRSの刺激は薄め。MTはガソリンモデルにも用意されていない。

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そこを履き違えて乗ってしまうと刺激の少なさに肩透かしを食らうのだが、これは決して「フィットタイプR」ではなく気持ちよさにフォーカスした「フィットRS」なのだと理解して乗れば、上質かつ爽快な走りを見せてくれる。いっそ全てのグレードをこの味付けにした方がいいのでは? と思えるほどだ。

何より、フィットが元々美点として持っている広い視界や運転のしやすさ、センタータンクレイアウトがもたらす広い車内などはそのままなので、RSは多くのユーザーに“フィットする”スポーツモデルに仕上がっていると感じる。

筆者が当初想像していた(願望が生んだ)刺激的なフィットは「ほとんど誰にもフィットしないフィット」なのだから、RSの刺激はこの塩梅がちょうどいいのだろう。まさに“ちょうどいい”スポーティなフィットである。

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