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プジョー508/508SW 勝負のプライスタグ!

驚異の静粛性とダイレクト感のある6AT

プッシュ式スターターを押してエンジンを始動。Dレンジで停車中に伝わってくるアイドル振動はちょっと大きめだ。フロアやシートを揺らすほどではないが、5~6Hz程度のブルブルした振動がステアリングホイールを通して掌に伝わってくる。ひと昔前なら「FFの特性」として片付けてしまっても問題ないレベルだったが、VWゴルフやパサートがFFでありながら「ほぼ無振動」を実現していることを考えると、エンジンマウントのチューニングや回転数の制御など、アイドル振動の抑え込みにはもう一歩の煮詰めが欲しいところではある。

もっとも、VWのDSGは停車時にはクラッチを切ってエンジンをフリーで回しているため、アイドル振動の面では有利なのも事実。そんなハンディキャップを覆すためには、停車時にATのクラッチを切るようなアイデアを検討してみるのもアリかもしれない。

DSGと比較してトルコン式6速ATの方が勝っているのは、発進時や車庫入れ時といった、クルマが動くか動かないか、あるいは極低速時の扱いやすさだ。初期のものと比べればDSGもかなりスムースになったが、多板クラッチの摩擦をコントロールするという構造上、アクセル操作に気を遣ってやらないとギクシャクした動きが出るケースもある。その点、流体クラッチであるトルコンはそのあたりの特性がいい意味でルーズであり、段差を乗り越えたらすぐに壁…といったシビアな車庫入れも無難にこなしてくれる。

走り出してしまえばアイドル振動は消え、このエンジンが本来的にもつスムースさが前面に出てくる。4気筒としてはトップレベルのスムースさと静粛性が、入念な騒音対策を施したボディと組み合わさった結果、508の静粛性はちょっと驚くほどの水準に達している。プジョーは自分たちをプレミアムブランドではないと言うが、508の静粛性は間違いなくプレミアムカーである。

特筆したいのは第2世代ATのダイレクト感だ。トルコンを使っているのは発進時や低速時といった一部の領域のみで、残りの大部分はロックアップクラッチをつないだ「トルコンスリップゼロ」の状態で走る。508のロックアップ領域の広さは他に例がないほどで、走行時のダイレクト感はDSGやMTに近い。加えて、ロックアップクラッチを解除しているときも、ATの特性そのものが非常にタイトなため、ズルズルしたスリップ感を伴うルーズさは皆無。トルク増幅効果を伴うトルコンスリップが少ない分、エンジンには負担がかかるが、そこは前述した1400rpmで2.5リッター並みのトルクを生む直噴ターボがキッチリとカバーしてくれる。

スムースさを最重視した日本車のATに慣れた人が乗ると、最初はMT車のようなダイレクト感に戸惑うかもしれないが、慣れてしまえばとても気持ちのいい走りを味わわせてくれることに気付くこと請け合いだ。

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