目指したのはサーキット性能の向上と言い切るホンダ シビックタイプRのマイナーチェンジ、一体誰得なの?
掲載 更新 carview! 写真:望月 浩彦 121
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続いて、今回のシビックタイプRに施された改良点を細かく見ていきましょう。ホンダの開発陣が今回のマイナーチェンジで第一に目指したのは「サーキット性能の進化」。市販車ですが、サーキットでの走行性能が優先事項です(ちなみに2月上旬の取材時点では、ニュルブルクリンク北コースでの“FF最速”の座をかけたタイムアタックはまだ行っていないとのこと)。
まずはエンジン冷却性能の向上を図るため、グリル開口面積を13%拡大しつつ、ラジエターのフィンピッチを3.0mmから2.5mmに狭めて放熱面積を拡大。一例として気温25℃のサーキット走行時に最高水温が約10℃低下する効果があったとか。
空力関係ではバンパー下のフロントエアスポイラーの付け根の肉厚を増して高速走行時の倒れ剛性を向上。また、左右端にはリブを追加してタイヤ前負圧を増加させ、トータルでフロントリフトを低減しています。
プレーキは1ピースの穴あきディスクから、2ピースのフローティングディスクに変更し冷却性能を向上。ブレーキング時に内側と外側の温度差でディスクが歪むディスク倒れ(熱倒れ)が大幅に減少したことで、鈴鹿サーキットでの連続走行でも安定したブレーキングが行えるようになったそうです。
また、サーキット以外でも、「一体感/ダイレクト感の進化」を追求するため、アダプティブ・ダンバー・システム制御をアップデート。センサーサンプリング周波数を2kHzから20kHzとして、より細やかなロール、ピッチの姿勢制御を可能にしています。
また、サスペンションのジョイント部分のフリクション低減やブッシュの高減衰化・高硬度化などで、荒れた路面での接地性、制振性を向上。アンジュレーションのある路面のコーナリングでもタイヤ接地荷重抜けの低減を果たしています。
インテリアでは、ウレタン素材に1.3mm厚の本革を直巻きしていたステアリングホイールを、ウレタン素材に0.3mm厚の裏地を2枚巻いてから、表皮に0.7mm厚のアルカンターラを巻く方式に変更。外径はそのままに握りの質感やフィット感を向上させています。
他にも、シフトノブを丸型から、ノブの傾きを認識しやすいティアドロップ型に形状変更。素材も芯材にスチールを入れたアルミニウム製とすることで、錘(おもり)効果によるシフトチェンジの操作性向上を図るなど、とことん市販車らしからぬマニアックで細かい改良を行っています。
唯一、衝突軽減ブレーキや歩行者事故低減ステアリング、アダプティブクルーズコントロールや車線維持支援システム、オートハイビームなど、ホンダセンシングの機能の標準装備が、市販車らしい変更点と言えるでしょうか。
正直、タイプRに興味のない人々にとっては、あまりにマニアックな内容ゆえに改良点を聞いてもポカンとしてしまいそうですが、ホンダの開発陣がやりたいことを実現し、その信念に共鳴している“ホンダのタイプRが大好き”なコアなファンに届けば、それでいいというのがタイプRの世界。
タイプRの世界は考えていた以上にマニアな世界でしたが、マニアとはそもそもギリシア語で「狂気」を意味するとか。マニアなホンダ開発陣がマニアな改良を施したシビックタイプRに対するマニア達の熱狂は、今後もしばらく続くことになりそうです。
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