リンカーンMKX 個性も迫力もアメリカンサイズ

本当の驚きは欧州車的な走りにある！

最後に、今回MKXを改めて取り上げた本当の理由を話そう。それは走りの質への驚きだ。

特に、旋回中に“何だか得体の知れない力”で、クルマの旋回挙動が不思議ほど安定する感覚。さらにはステアリング剛性が高くハンドルからの手応えや操作に対する反応が的確なうえ、ロールがとてもスムーズかつ綺麗で、気持ち良く走れることに驚いた。

その走りは、ドシッとしながらもダラッと走るアメ車的な乗り味からはかけ離れたもので、ボクのなかでは欧州的な乗り味ともいえる。しかも単なる欧州車ではなく、出来の良い欧州車だ。というのも、これだけ足回りがよく動いているのに、不安感をドライバーに与えず、気持ちよく走れるSUVなどめったにお目にかかれない。

残念（？）なのは排気音がとてもジェントルなことだ。優れた環境性能とダイナミクスの両立を狙って仕上げられた3.7リッターV6エンジンは、十分すぎる加速力をもたらすし、マニュアル操作を行えばダイレクト感に優れたスポーティな走りも楽しめる。

しかし、高回転域でも排気音が静かだから刺激は少ない。昔ながらのアメ車のV型サウンドをイメージすると、肩すかしをされた気分になる。まあこれは、リンカーンが静粛性や高級感を高めようとしているので、無い物ねだりに近いけれど。

最後に得体の知れない力の正体にも触れておこう。様々な走行シーンやパターンを試した限り、ボクの予想では各車輪への個別ブレーキ制御しか考えらないという結論に到達した。資料には思い当たる技術が2つある。

インテリジェントAWDシステムはトルクステアを抑え、スムーズな曲がり出しと素直な旋回特性を得られるように前後トルク配分をコントロールする。

そこにRSC（トラクションコントロール）付きのアドバンストラックが組み合わさることで、かなり追い込んだ走行シーンでも、各車輪のブレーキ制御により、SUVにありがちな腰高感があまり発生せず、連続するカーブの切り返しなどでも、これまた気持ちよく豪快に走れた可能性が高い。これら電子制御の恩恵を受けていつつも、それをドライバーに意識させずに違和感無く使いこなしているのが凄いわけだ。

内外装の個性的な魅力に加えて、快適性とダイナミクスの両立を狙って粘るように動く足回りと、摩訶不思議な安心感に優れる操縦安定性を持ち合わせるMKX。SUV選びで迷った時には、注目して損をしない“隠れお勧めモデル”と言えます！