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4WD&トルコン8速AT採用の新型M5はハンドリング性能と乗り心地で群を抜く

サーキット全開走行で実力を試す

F1が開催されたことでも有名なエストリルサーキットでは、先導車付きではあるが全開走行が許された。最初の2周はステアリングスイッチM1を押し、エンジンはエフィシェント、サスペンションはコンフォート、ハンドルはコンフォートというモードで走った。これでもかなり速いペースで走れる。このあとM2スイッチを押し、全部をスポーツモードにして4周走った。M2ではMDMになるようにプリセットされていたようだが、コーナーのエイペックス付近からアクセルを深く踏み込んでもリヤが出ていく感じにならず、かといってそのままアンダーステアになることもなくいい姿勢でコーナーを脱出できる。

基本は0対100の前後トルク配分ではあるが、リヤが空転し始めるとすぐにフロントに駆動力を分散するから、トラクションが途切れずまたバランスを崩さずに加速を続けることができるのだ。ドライブしている立場からは、フロントの駆動は最小限に留めているように感じた。あくまでも駆動力の余った分だけ、リヤが負担できない分だけをフロントに振り分けているから、フロントが逃げてしまうアンダーステアは出ず、パワーオーバーステアも出ないのだ。このトルク配分は絶妙なセッティングである。

オプションのカーボンセラミックブレーキ装着車だったが、250km/hオーバーからの踏み始めの効きの良さはローターが軽いせいだろう。カーボンセラミックが進歩したので、サーキット走行で酷使してもローターがもつようになった。ただし周回を重ねると徐々にペダルが深くなり、試乗で酷使されたタイヤが熱を帯びたせいもあって制動力は低下してきた。

Mのエンジニアでパワートレイン担当のアクセル・シュラム氏に聞いたところ、リヤが空転を開始したらフロントにも駆動力を配分するのが原則だが、サーキット走行のような場面では、ターンを始めてエイペックス付近になったときに、ここでパワーをかけたらリヤが滑り出しそうな状況ではドライバーがアクセルを踏む前から4WDにして準備するフォワード制御もするという。クルマのスピード、ハンドル角、横G、ヨーレイト、ギヤなどからコンピュータが計算するそうだ。

DSCをオフにした場合には、4WD、4WD SPORT、2WDという3種類から駆動方法を選ぶことができる。4WD SPORTというのは、多少リヤが滑っても許すモードだ。つまりリヤが空転を始めてもすぐにはフロントに駆動力を分配しないからドリフトアングルをつけながら立ち上がることができる。ある程度の空転やアングルが大きくなったときには4WDにして助けてくれるからありがたい。後輪には電子制御のLSDが装着されているが、これも単なるリミテッドスリップデフではなく、フォワード制御もしている。最後の2WDは危険なモードである。低速のジムカーナのような場面では良いが、サーキットでは姿勢の乱れが大きくタイムが遅くなることは間違いない。

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