ギャランフォルティス増殖 RALLIART&Sportback
掲載 更新 carview! 文:河口 まなぶ/写真:
掲載 更新 carview! 文:河口 まなぶ/写真:
ラリーアートには、まず何といってもエボXとは性質の異なる“快適な”乗り心地がある。単純に乗り心地に優れるというだけでなく、サスペンションがよく動くことで路面の変化を確実にいなすため、常にフラット感が高いのだ。しかもそこに、エボXとは違う次元のしっかり感やしなやかさも同居しているのが印象深い。
専用チューンされたエンジンの印象もイイ。なぜならエボXが最大トルクの43.0kg-m(=日本仕様。欧州仕様は37.0kg-m)を3500rpmで発生するのに対し、ラリーアートでは最大トルクの35.0kg-mを2500~4750rpmという広範囲で発生する。つまり実用域のほとんどが最大トルク発生領域となるため、低速域からパワーが実感できて、わずかなアクセルワークでも事足りてしまうのだ。
そんなドライバビリティの高さもあって、一般道ではエボXとは比べ物にならないほど快適だ。そしてこの印象は、アウトバーンでも変わらないどころか、逆に光ることになった。アウトバーンをエボXで走ると、足のハードさゆえか路面の変化でボディがヒョコヒョコと動く。だがラリーアートは同じ状況でも、しっかり感としなやかさが同居するサスペンションの効果で、200km/hオーバーでもフラット感を失わない。加えて(とくに欧州仕様では)動力性能的にも差は少なく、前を行くエボXが全開加速をしても、ほとんど遅れを取らない。またハイギアード化された6速がエンジンの回転を低く抑えているので、静粛性も高い。つまりラリーアートは、エボXよりも優れたGT(グランドツーリング)としての資質をここで披露してくれたのだ。
ニュルブルクリンクの北コースでは、さすがに速さでエボXに及ばない。とはいえエボXよりも大きなボディは逆に、車両運動の推移が把握しやすく、限界点も分かりやすい。一言でいえば、クルマとの対話性が高いのだ。また広範囲にわたるトルク特性の恩恵で、コーナーからの脱出でも物足りなさは感じず、しっかりと気持ちよい汗がかけるレベルに仕上がっている。ひとしきり走り終えた後の総合的な印象は、「ニュルもしっかり走れるのに、なんと快適か!」というもの。ラリーアートは決してプアマンズ・エボなどではなく、デイリーユースで満足感が存分に味わえるベストバランスのスポーツなのだ。
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