NSXに本格試乗した。看板技術のSH-AWDは諸刃の剣か?
掲載 更新 carview! 文:五味 康隆 /写真:本田技研工業株式会社
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最後にNSXの要、ベクタリング効果を生み出すSH-AWDに注目していこう。実は限界を引き出すには、相応の運転技術とコツが必要だ。通常のクルマならコーナーへの進入でフロントタイヤが滑って曲がらない時にはハンドルを切り戻すが、NSXではさらに切り込む。すると前輪のベクタリングが威力を発揮するとともに、リアの内輪にブレーキが掛かりさらに曲がり込む。コーナー出口で通常ならフロントが外に逃げてしまう場面でアクセルを踏んでも、オンザレールのまま豪快に加速する。
3ページ後半で触れた上級者向けの忠告は、こうしたNSX独特の限界特性や操作のコツがあるので、攻めるならまずクセをつかんだ方がいい、というものだ。SH-AWDの制御は人間が引き出せないクルマの性能を電子制御で引き出すことができる。しかし、タイヤのグリップ力を高める魔法ではないから(SH-AWDでもタイヤの物理限界は変わらない)、コーナー進入でハンドルを切り過ぎれば曲がらない領域はあるし、出口でアクセルを開けるのが早すぎれば、V6ターボエンジン+モーターで駆動するリアが暴君になる時もある。誰もが手軽にかなりの速さで走れるのだが、逆に限界域ではSH-AWD専用の操作やタイミングが求められる。そのタイミングをつかむには走り込んで慣れるしかない。
理想はどんな制御だろうが、ハンドルからの手応え(情報)と相談して、直感的にクルマの限界をつかみ、操作調整できることだ。あえて重箱の隅を突くと、NSXの唯一の弱点が独特の特性と、ハンドルから伝わるグリップ感などの情報が少ないことだ。これは1725kg前後の車両重量を、573psの大パワーを発生するエンジンとモーターによって電子制御ベクタリングで意のままに走らせるために、犠牲になった要素なのかもしれない。
というわけで、個人的には車重の根本的な軽量化を図り、サスペンションやベクタリング制御や排気音などを好みに調整できるようにして、気持ち良さなどの官能性能と速さを追求した“タイプR”の登場にも期待をしてしまう。何はともあれ、北米市場が大事なのも解るが、一日も早く日本市場で発表発売してもらいたい。
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