【聞いてビックリ】ストが荒れ狂う米自動車メーカー。労働者の日給はハウマッチ?
掲載 carview! 8
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バイデン大統領も支持を表明するなど、にわかに注目を集めている全米自動車労働組合(UAW)のストライキ。交渉相手となっているのは、ゼネラルモーターズ(GM)、フォード、ステランティスのいわゆる米ビッグ3だ。はたして彼らはどんな要求をしているのか?
その実態を探ってみたところ、見えてきたのは現状でも我々にはうらやまし過ぎる彼らの待遇と、日本の惨めな実態だった。ここでは、UAWストの中身を深掘りしつつ、その結果、明らかになった日本の悲惨な労働環境っぷりを晒していきたい。
まず、UAWがストライキで要求している内容を大きくまとめると、従業員を2つに分ける給与体系の廃止、インフレと連動した賃金の生計費調整制度の導入、4年間で36%の昇給、バッテリー電気自動車(EV)への移行に伴う雇用の確保などなど。
このうち最初の給与体系見直しについて紹介すると、GM、フォード、ステランティス(当時はクライスラー)では、2007年以降に雇用された従業員にだけ、それまでより低い給与水準が適用されており、UAWとしてはこうした扱いが差別的として制度の廃止を求めているのだ。
おそらくこの制度は、中国など新興国の安い生産コストに対抗すべく、人件費を少しでも抑える狙いで導入された措置だろうが、同じ仕事でも入社年で全然違う給料だったらやる気が出ないのも当然。見直しは妥当といえるだろう。
ただ、あとの要求は、日本人にとって「高いタマ投げ過ぎ!」という感が否めない。賃金水準の話は後で詳しく見ていくとして、EV移行に伴う雇用の確保について考えてみると、さすがに現状と同じ雇用量を米国内で確保し続けることには無理がある。
というのも、EVは内燃機関車(ICE)に比べ部品点数が3分の2程度と少なく、部品の製造に必要な人員や組み立て要員が必然的に少人数で済む。さらに、テスラが導入したギガキャスト(複数の部材を組み立てて製造していたパーツを、巨大なプレス機で一発成形する技術)に代表される製造過程の革新も各国で進んでいるから、自動車製造にかかる人手はどんどん少なくなっていくと見込まれるのだ。
もちろん、こうした新技術は、人件費を始めとしたコスト削減も狙ったものなので、これまでと同じ雇用を米国内で維持していたら他国のメーカーに競り負けてしまうだろう。
ということで、雇用の維持も相当難題なのだが、さらに日本人からは無理ゲーと思えるのが賃金に関する2つの要求だ。そこで、まず現状で米国の自動車産業で働く労働者がどのくらいの賃金水準なのかというと、何と今でも時給換算で64ドル(約9,600円)を稼いでいる模様。
この時給を基礎に、日本と同じく1日8時間労働で1か月当たり20日程度働いたとすると、単純計算で年収は1,843万円となる。実際の年収はもう少し低いようだが、仮に年収1,500万円としても、日本では相当の高所得層と言えることは間違いなく、ほとんどの日本人にとっては喉から手が出る待遇が既に実現している。
そんな中、UAWが賃金に関して要求しているひとつ目が生計費調整制度。Cost-Of-Living-Adjustments(COLA)と呼ばれるこの制度は、物価の上昇分に応じて賃金を引き上げる仕組みで、インフレによる実質的な賃金の目減りを埋め合わせることが狙いだ。
そして、UAWの調べによると、前回の労働契約が結ばれた2019年から現在までに物価は19.6%上昇しているということだから、詳細な要求水準は不明だが、単純に考えると現在から約20%アップの時給77ドル(約11,550円)を求めていることになる。
時給1万円超なんて夢のようだが、そんなことで矛を収めないのが全米最強の労働組合であるUAW。さらに上乗せとして4年間で36%の昇給、つまり単純計算で時給105ドル(1万5,750円)程度という凄まじい給与水準を要求しているのだ。
実はこれでもUAWとしては経営サイドに歩み寄っており、当初の要求は4年間で40%の昇給だったというから、もはや開いた口が塞がらない。
そして、これらの要求がすべて通った場合、新しい給与水準は時給150ドル(約2万2,500円)になるという。単純計算よりさらに高くなっているが、実はUAWでは他に年金および退職金の改善や労働時間の短縮も要求しているため、こうした金額になるというのが種明かし。年収ベースでは時短の影響もあり、2,000万円程にとどまるらしいが、日本では外資系のスーパーエリートでもなければ届かない水準だ。
米国労働者のリッチぶりに悔しい思いをした後で、ここからは我ら日本の労働者にスポットを当てる。まず、国税庁によると昨年の日本の平均賃金は458万円だから、現状でも米国の自動車産業労働者の4分の1程度。仮にUAWが要求している賃上げがすべて実現すれば、この差はもっと開く。
つまり、我々が4~5年働いて稼ぐ収入を彼らは1年で稼ぐことになるのだ。日本でも久方ぶりの大幅賃上げが実現したなどと大々的に報道されているが、大企業でもその割合は4%弱。国民の多くが働く中小零細企業ではいまだに「賃上げの予定なし」というところも多いから、米国とは雲泥の差と言ってよい。これでは、日本人の多くが将来に希望を持てないのも当然だろう。
さらにガックリくるのは。米国での賃上げが日本の労働者をさらに苦しめる可能性があること。というのも、ビッグ3で大幅賃上げが実現すれば日系自動車メーカーも米国の従業員をつなぎ止めるためにある程度追随せざるを得ず、それが収益の押し下げ要因となって、日本国内での賃上げを難しくするからだ。
しかも、米国経済で自動車産業は大きなウェイトを占めるから、そこでの賃上げが国全体のインフレを深刻化させれば、さらなる利上げが行われ、日本では円安がもっと進む可能性もある。そうなれば、ガソリンや食料などが値上げされ、日本人の暮らし向きはさらに悪化してしまう。
「いやいや、そんな賃上げ実現するわけないでしょ」と侮るなかれ、ビッグ3との交渉に先立ってUAWではキャタピラーなど世界的企業に20%以上の賃上げを認めさせており、今回の法外にも見える要求が実現する可能性は低くはない。
政治の世界を見ても、バイデン大統領だけでなく、トランプ前大統領もストを支持するようなコメントを出しており、左右両陣営が総出で賃上げを後押ししているのだ。
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ということで、米国の労働者はもっと幸せに、日本の労働者はもっと不幸にという最悪な結末が見えてきているのが実情だ。
・・・と、ここまで最悪な状況ばかりを挙げてきたが、電動化の時代にあって自動車業界に大きな地殻変動が起きていているのはひとつの希望かもしれない。つい先日もトヨタを筆頭に日本メーカーの業績が絶好調というニュースがメディアを賑わせるなど、労働者が追い風を感じる状況もある。
さらに言えば、勢いが止まらなかった米国の賃金インフレも、中央銀行の政策金利引き上げによって遂に減速を見せ、今後、米国は失業率上昇や円高に転じるとみる向きも多い。日本の労働者はこんな時こそ得意の粘り強さを発揮して、着実に前進を積み重ね、労働環境の逆点を狙っていくべきなのかもしれない。
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<終わり>
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