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アバルト・グランデプント、ほとんど天才的!

速くないけれど速いっぽい

肝心の走りだが、これまた雰囲気重視だ。正直、スペック的にはコーナリングスピードを除けばそれほど速くはないだろう。直線などはヘタな国産セダンの方 がよっぽど速いはずで、ただ全体に“速い感じ”はコッチの方がある。それがきっと今のアバルト戦略なのだ。まず意外と軽いクラッチを踏み、これしか選べない6速MTを操作して、走り出すと感じるのがステアリングのゴリゴリ感だ。別段重いわけではないが、チューニングカーにありがちなゴムっぽさというか抵抗がちゃんとあり、これだけでクルマを知る人は「やはりアバルト」と思ってしまう。6速MTもストロークこそ長いがちゃんとキモチ良く入る。

 エンジンも同様に独特のこもり音があってちゃんと演出されている。アイドリング付近では静かなのだが、3000回転も回すと低音がそれなりに響いて、ノーマルとは違うことを教えてくれる。乗り心地もそう。専用チューンがなされ、ローダウンされた足回りは滑らかな路面ではそれほど乗り心地は悪くない。というか全体的には乗用車レベルだ。ところが路面の大きなうねりに遭遇すると、多少ピョコピョコするし、大きめな路面の継ぎ目を越えるとゴリっと来る。ブレーキも踏み始めからガツンと来るほどレーシングカー然とはしてないが踏み込むとそれなりに効く。

 肝心のエンジンだが、普通に使っている限りそれほど速くはない。スペック的に見ると、同じ1.4リッター直4を搭載するノーマルモデルが、SOHCノンターボで77馬力のところを、DOHCターボ化されてIHI製タービンが装着された状態でも155馬力。約2倍になってるとはいえ、車重1.2トン超ではそれほど余裕があるわけでもなく、スポーツモデルとして平均的だ。

 しかし、インパネのスポーツブーストボタンを押すと、とたんに最大トルクが2割近く増して23.5kg-m(230Nm)に達する上、発生回転が下がる。するとそれなりにキビキビとダッシュし、よく効くステアリングも相まって楽しく走れる。サーキットを走って速いかは今一つ疑問だが、非常に演出上手なクルマなのだ。

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