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アストンDBS、待望の“ヴォランテ”に試乗!

オーナー第一主義

アストンマーティンが創業以来一番多くの生産台数を稼いだのは2007年。「DB9」、「V8ヴァンテージ」にトップエンドの「DBS」が加わり、“現代アストン”のラインナップが構築され、それまで毎年右肩上がりで推移してきたグラフがピークを迎えた。だがリーマンショック以降、ご多分に漏れずアストンも販売台数をガクンと落とし、昨年末から今年にかけてヘッドクォーターのみならず、インターナショナルでリストラクチャリングが行われることになった。

とはいえ、今年に入ってからのアストンの動きを見ていると、そんな不安を抱えているとは思えない。5月に「V12ヴァンテージ」を、6月に「DBS ヴォランテ」を追加、さらに秋には待望の4ドアサルーン「ラピード」も発売を開始する。もっといえば、あの100万ポンドカー「ONE-77」も計画通りに注文を受け付けている。6月にゲイドンに訪れた際にその受注状況を訊くと、およそ半分が売れているとの答え。しかも、オーダーは販売価格の約20%のデポジットが必要ということだから、およそDBS一台分の金額が40台近く入金されていると考えられる。しかも、“自分だけの一台”を欲しがるマーケットだから、一台100万ポンドでは済まないことになっているのではないだろうか。

では、なぜ彼らはこの不況下においてほぼ計画通りの経営戦略を行っているのか。その答えは、CEOであるDr.ベッツのコメントの中に隠されているような気がする。それはV8ヴァンテージに12気筒エンジンを搭載したのも、DBSクーペおよびヴォランテにリアシートを付けたのも、「アストンオーナーの声を拾った結果」だということだ。要するに、Dr.ベッツはオフィスでふんずり返っているのではなく、日々様々な場所へ足を運びオーナーたちと顔を突き合わせているということ。例えばそれはル・マンに代表されるサーキットだったり、コンクール・デレガンスだったり。セレブ系カーガイが集まる世界屈指の場所で、彼は様々な情報を収集しているのだ。

また、彼らは現状をこうも分析している。それは「このクラスのクルマを買う人がいなくなったのではなく、買うのを控えているだけだ」と。それでも現実問題としては、いま財政的に引き締める必要がある。事実、今年のニュルブルクリンク24時間は出場すら危ぶまれ、結局は台数を減らして参戦した。ただ、それにしてもこのところのニューモデル攻勢は恐れ入る。相当な自信あっての戦略ではないか。アストンファンとしてはマーケットがいち早く活性化することを期待したい。

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