I-PACEはジャガーの思想が反映されたクルマ屋らしい完成度を持つEV
掲載 更新 carview! 文:岡崎 五朗/写真:菊池 貴之
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ジャガーらしさを残しつつEVに最適化した新鮮なスタイリング、プレミアムなインテリア、上質な乗り味、パフォーマンスの持続性、実用的な航続距離、そしてもちろんEVならではの優れた静粛性とパワーフィール。I-PACEはあらゆる点で素晴らしい実力を備えたEVだ。
しかし、だからといってすべての人に諸手を挙げてオススメできるかといえば、そう単純な話しではない。959~1312万円という価格は、内容を考えれば決して高くない。むしろ専用開発したプラットフォームに90kWhもの大容量バッテリーを搭載していることを考えれば利益はほとんど出ていないのではないか。問題となるのは、やはり充電にまつわる不自由さだ。自宅で充電できる人なら、常にバッテリーの腹を満たしておけるから、よほどのロングドライブ好きでもなければほぼ問題なく使えるはずだ。しかし、マンション住まいなどで自宅では充電できない人が、急速充電器頼みでこのクルマを運用するのはかなりの無理がある。このあたりは独自の充電ネットワークを設定しているテスラに分がある。
I-PACEの資料には、CHAdeMOの50kW急速充電を使えば約85分で0%から80%までチャージできると書いてある。ただし多くのCHAdeMO充電器は1回30分の制限があるため、混雑状況によっては2回、3回と連続占有するのは難しい。しかもCHAdeMOには50kWだけでなく20kWタイプもある。20kWタイプの30分チャージで入る電力量などたかがしれている。単純計算で40km程度。お茶を飲んでいる間に充電すればいいんだよね、などと甘く見て購入すると痛い目に遭うのは必至だ。
また、クルマ側で最大7kWまで対応する普通充電も、一般的な3kWタイプでは空の状態から満充電にするとなると一晩では足りない。できれば6kWタイプの設置が望ましい。ただし6kWは200Vで30Aだから、自宅の電力契約の上乗せや宅内配線のやり直しも必要になってくる。もちろん、こうした面倒なことを乗り越えた先には、いままで体験したことのない素晴らしい世界が拡がっている。一歩先を行くクルマの楽しさ、モーターが生みだす新しいジャガーの世界を味わいたいなら、チャレンジする価値は大いにある。
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