走り出すとそれは、紛れもなくハチロクだった…伝説の「TRD N2 AE86レビン」が筑波で再び蘇った日
掲載 carview! 文:山田 弘樹/写真:市 健治 6
掲載 carview! 文:山田 弘樹/写真:市 健治 6
また空力デバイスの装着に対しても、TRDはコンサバな姿勢を貫いた。勝利に貪欲なプライベーターたちが躊躇なくカナードやGTウイングを装着したのに対して、土屋さんとホットバージョンとしては同条件での勝負を熱望していたようだが、TRDのエンジニアである故・桜井忠雄さんは、あくまで「N2本来の姿」として戦うことを望んだ。
果たして空力デバイスと呼べるものはフロントバンパーのアンダーカバー式リップスポイラーと、リアスポイラーをエクステンションした巨大なガーニーフラップだけだったから、レースでは苦戦を強いられた。
タイヤはダンロップが今回のために、スリックタイヤを用意してくれた。サイズは250/585-15で、コンパウンドはジムカーナ用。そしてこの15インチタイヤを収めるために、フェンダーは従来のN2仕様からさらに20mm拡大された。
足周りはTRD製ダンパー(フロント5段/リア8段)をベースにしたフルタップ式の車高調。ホイールはレーシングサービス ワタナベの「R Type」で、素材はマグネシウムだ。
現代のクルマとは違ってリアサスがリジッドアクスルだったハチロクは、たとえ5リンクの上側2本を等長化しその動きをスムーズ化しても、コーナーにおけるリアタイヤの接地性が低かった。GTウイングでその浮き上がりを抑え付なければとても、筑波1分の壁を切ることができなかったのだった。
事実TRD号が初勝利を挙げたのは第3戦で、その後は土屋圭市さんの引退記念イベントを行った2004年第5戦の、2戦のみだったのである。
対するエンジンは当初、フォーミュラ アトランティックに準じた4A-Gをドライサンプ仕様で搭載した。排気量こそ1587ccのままだが、IN320/EX304のTRDカムを手始めに、ピストン、コンロッド、スロットルボディまで全てが変更されたエンジンは、1万2000rpmで230PSを発揮。普段はこれを抑えて、220PS/1万rpmで使ったのだという。
しかし残念ながらこのエンジンはN2決戦の戦いの中でブローを喫し、これを修復するべき桜井さんがお亡くなりになったこともあって、現在はコシミズモータースポーツが製作したKMS製エンジンが搭載されている。
AE92後期ヘッドと4A-Gブロックをベースにしたフルチューン仕様で、ピストンやコンロッド、クランクにまで手が入っているものの、吸気側カムを304度に抑え許容回転数を9000rpmリミットとしたことで、約200馬力を発生するに留まっている。制御はフリーダムで、吸気はAE111用の4連スロットルだ。
(次ページに続く)
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