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WRX STI tSに試乗! イメージが変わる走り

滑らかな感覚に支配される

これがWRX STIか?と疑う気持ちすら芽生える。なぜなら手のひら、背中、腰を通して伝わるその走り味が、拍子抜けするほどにしなやかで洗練されており、常に滑らかな感覚に支配されているからだ。それが、STIが2010年の最後に届けてくれたモデル『WRX STI tS』および『WRX STI A-Line tS』である。

STIは2010年、新たなシリーズである「tS」というグレードをレガシィ、そしてフォレスターに設けた。このグレードはこれまで「tuned by STI」と呼んできたモデルとほぼイコールと言っていいだろう。つまりその内容としては「S」や「R」を冠するモデルほど手は入っていないが、STIの最新のエッセンスが存分に詰まっている。と記すと、読者の中にはSやRのようにエンジンやタイヤ、ブレーキといった部分の変更が成されないtSをして、「本格的ではない」と思う人もいるだろう。しかしそれは大きな間違いだ。

なぜならばまず、近年のSTI(=走りのマイスターである実験部長の辰己氏が加入して以降)は、シャシーの良さで勝負しているブランドだからだ。事実、辰己氏が加入してから送り出されたSTIのプロダクトは、必ず新たな手法を盛り込むのが慣例で、“最新のSTIこそが最新の思想/哲学を反映したSTI”になっており、今回のWRX STI tSもその例に漏れない。つまりSTIではSやR、tSとグレードやポジショニングを問わず、最新モデルが常に新たなシャシーの考えで構築される。

そう考えるとSやRはもちろんだが、tSも進化の一端を担う役割がある。つまり、tSが上手く仕上がらなければ次のSやRの進捗にも影響が出る。事実、エンジンやタイヤ、ブレーキまで手を入れたSやRを作るには、新型車と同じ手続きの承認と新たな型式を受ける必要がある。これだけで相当のコストアップになる。すると我々の手元に届けられるときの車両価格は跳ね上がってしまう。そうした事情を考えても次のSやRのためにはtSでしっかりとシャシーを構築していき、それをさらにハイパフォーマンスなSやRで進化させる必要がある。その意味でSTIのプロダクトは、どれを欠くこともできない関係性を持っている、といえるわけだ。

それがtSというモデルの成り立ちであり理屈だった。“だった”と記したのは、そうした慣例が過去の話となったからだ、このWRX STI tSにおいては…。

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