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ボクスタースパイダー 「911じゃなくても良い」

いかにその走りが記憶に残るか?

「この気持ち良さなら…」。ボクスター・スパイダーを走らせてからしばらく、そんな思いが頭の中を占めていた。その言葉に続くのは、「911じゃなくても良いかも」という正直な思い。

なぜそんな思いを抱いたかといえば、ポルシェの送り出すスポーツカーには依然として超えられぬ“911とそれ以外”の図式があるからだ。つまりそれは911とボクスター(およびケイマン)との間に歴然とある、走りの“濃さ”といっても良い。この濃さを考えるとやはり、911とそれ以外、が未だあると言わざるを得ない。

ご存知のように911はRRという特殊なレイアウトを採用するがゆえ、走りとその感触は実に個性的で記憶に残る。これが先に記した“濃さ”そのものだ。それに比べるとボクスターやケイマンはポルシェの味わいは存分に感じられるのだけど、しかし、特異なRRから生まれる濃さを持つ911の独特な世界にはどうしても届かないのも事実だ。

いや、もう少し言葉を加えるなら、実はミッドシップ・レイアウトを採用するボクスターやケイマンの方が操縦性の素直さでは上だからだともいえる。911は悪く言えばクセが強く、いわゆるスポーツカーとしての完成度の高さはボクスター/ケイマンが上なのである。

だが、最近のスポーツカーは皆ある程度の速さを確実に有し、ある程度の操る楽しさ気持ち良さを当然のように備えている。それだけにむしろ最近では、いかにその走りが記憶に残るか? が大切な要素だったりする。

その意味において911は、性能はもちろん楽しさ気持ち良さも高レベルな上に、一度走らせたら絶対に忘れぬ濃さが歴然とそこにある。それゆえに“911とそれ以外”は未だ続く価値観でもあるわけだ。

ボクはその911を所有していてもなお、走らせる度にそのことを痛感する。しかしボクスター・スパイダーを走らせた瞬間、冒頭の言葉が頭の中に生まれ、新たな価値がここにあると思えたのだ。

この気持ち良さなら911じゃなくても良いかも…と思わせる最大の理由はもちろん、このモデルのハイライトである軽量化によって生まれた、走りそのものにある。

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