10年ぶり登場の新型グランドチェロキーは700万円台後半~1000万円の高級SUVに超進化! アルファードの豪華グレードもライバルか!?
掲載 carview! 文:塩見 智/写真:小林 俊樹 155
掲載 carview! 文:塩見 智/写真:小林 俊樹 155
パワートレーンは1種類で、先代グラチェロや現行ラングラーの一部モデルと同じガソリンの3.6リッターV6自然吸気エンジンと8速ATの組み合わせ。最高出力286ps/6400rpm、最大トルク344Nm/4000rpm。レギュラーガソリン仕様なのがありがたい。最近はこの程度のパフォーマンスをもつエンジンとして2リッター前後のガソリンまたはディーゼルの4気筒ターボエンジンを採用する例が増えており、ジープにも「ラングラー」が採用するガソリン2リッター直4ターボエンジンが存在するが、6気筒エンジンを採用したのは、フラッグシップモデルであることを考慮した結果だろうか。
このエンジンが実際に乗ってどうかというと、実用上十分だ。8速ATの適切なギアリングもあって、2.2トンの車重を痛痒なく走らせることができる。変速タイミングは適切なので、Dレンジに入れっぱなしでOKだが、吹け上がりがスムーズなので、わざわざパドルでマニュアル変速するか、スポーツモードに入れて高回転を多用すると、気持ちいい。嫌味ではなく純粋に言うが、速すぎないので気持ちいい吹け上がりを一般道でも長く楽しむことができる。
ただし安い方で788万円、高い方で988万円のグランドチェロキーの動力性能が“実用上十分”では満足しない人もいるだろう。3列化されたパッケージをはじめ、まずまず使いやすいアイシン製カーナビや一気にアップデートされ、動作精度の高いADASといった先進装備、サミット リザーブにいたってはリアルウッドの加飾パネルにマッサージまで完備された上質なレザーシートと、細かくチェックすると納得できる価格なのだが、どうしても先代のV6モデルが600万円内外で販売されていたのがまだ記憶に新しいため、高く感じるのは確かだ。
またグランドチェロキーといえば真っ先にヘミヘッドのV8モデルが思い浮かぶ人は少なくないだろう。この価格を出すならV8が欲しいという声が出てくるのも予想できる。本国では新型にもV8の設定があるが、日本仕様は見送られた。将来導入されるかどうかはわからないが、多分ない。代わりに追ってPHVが導入されることが決まっている。OHVに代わってPHVが入ってくるわけだ。
PHVは360psを超えるシステム出力を発揮するので“十分以上”の動力性能を誇るだろうが、日本のファンがどう評価するか楽しみ半分、心配半分といったところ。乗れば気に入っちゃうのがPHVあるあるなので、受け入れられるとは思うが、時間はかかるかもしれない。あるいはこれまでとは別のお客さんに受け入れられるクルマになるのかも。
乗り心地は良好だ。大きな車体であることを生かし、ゆったりとした動きに終始する。エアサスのほうが路面からの入力による衝撃は多少マイルドだが、コイルサスでも問題ない。静粛性も高いので、ロングツーリングを得意とする。特にサミット リザーブの左右独立の2列目シートはフロントシート同様の形状とサイズをもっている。スライドとリクライニングが可能で、座り心地は前席と比べても遜色がない。席間に備わるコンソールボックスはリッドのヒンジが前後にあって、両側から開けられ、3列目の乗員もモノを出し入れしやすい。リミテッドの一体型3人がけシートは標準的。車幅があるので3人掛けてもスペースは十分だ。
3列目の形状は両グレード共通。オケージョナルの域を完全に超え、頭上、足元ともに大人ふたりが長時間過ごしても不満の出ないスペースが確保されている。2列目をチップ&スライド(座面ごと持ち上げながら前へスライドする)させられるため、3列目へのアクセスのよさはライバルを明確に上回る。当然2列目も3列目もミニバンまでの天地の余裕はもちろんないのだが、座った状態での快適性は変わらない。天井の中央にカメラがあり、2列目や3列目の乗員をセンターパネルのディスプレイに映像として表示できるファムカメラというユニークな機能がある。特定の座席をアップにもできる。
ライバルは3列シートをもつSUVであり、ランドローバーのディスカバリーおよびディフェンダー、トヨタ・ランドクルーザー、メルセデス・ベンツのGLEおよびGLS、BMW X5およびX7、アウディQ7あたり。こうしてライバルを具体的に挙げてみると、グランドチェロキーLが決して高価ではないことがわかる。またジープは、日本市場において圧倒的に母数の大きいミニバンの王様、アルファードからの乗り換えを期待しているようだ。あそこまでの室内空間がない代わりに高い悪路走破性がある。面構えも負けていない。確かに迷う選択かもしれないなと思わせる。
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