新型Bクラス、史上最大級のモデルチェンジ!
掲載 更新 carview! 文:木村 好宏/写真:Kimura Office
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1997年に誕生したAクラス、そして2005年に加わったBクラスは共にサンドウィッチ構造のフロアを売り物にしていた。このお陰で比較的高いドライビング・ポジションが得られ、特にシニア・ドライバーからは好評であった。また床下にバッテリーや水素タンクなどを収納することが可能で未来を見据えたコンセプトとも言われたのである。
しかし、反対に問題もあった。まず重心が高いために、いわゆるエルク・テスト(急なレーン・チェンジ)で不安定な挙動を指摘され、ESPの装備無しでは市場が納得しなかった。さらにこのプラットフォームでは、たとえば低いボディを持つスポーティカーあるいはカブリオレなどのバリエーションが作れず、ゴルフ・ファミリーのような高い効率を持った量産効果を得る事が出来なかったのである。また全長を切り詰めたボディは全面投影面積が大きかったので空力特性が悪く、燃費を稼ぐためにオートマチックにはドイツ人の嫌いなCVTを採用せざるを得なかった。
このような状況にも関わらず2004年までの7年間で110万台販売した事実は明らかにメルセデス・ベンツのブランド力によるものであると思う。少なくともコンパクト・セグメントでもベンツに乗りたい人は存在すると考えたメルセデス・ベンツのマーケッティングは正しかったのである。
そこでメルセデス・ベンツはクライスラーと共に手を組んでいた時に次期A及びBクラスにはダッジ・キャリバーのコンベンショナルなプラットフォームを利用しようと考えていた。ところが両者は袂を分かってしまった結果、メルセデスは自社開発を決意、新たに汎用性の高いMFA(メルセデス・ベンツ・フロント・ドライブ・アーキテクチャー)を新世代のA、そしてBクラスに採用することを決定した。
新しいBクラスが発表されたウィーンでのプレスコンフェレンスでメルセデス・ベンツのディーター・ツェッチェ会長は「2020年までにプレミアム・ブランドの中でナンバー・ワンのポジションを確保する!」とIAAで発した決意表明をここでも繰り返した。そしてさらに「そのために10台のニューモデルを市場に導入する。」と語った。この背景には、メルセデス・ベンツがBMWに水を開けられているという現状がある。実際、2011年1~8月の販売台数は、BMWの107万1303台に対してメルセデス・ベンツは86万7379台と後塵を拝しているのだ。
その最初のモデルが今回登場した新しいBクラスである。会長のDr.ツェッチェは、なぜAではなく、Bからスタートさせたのかという私の質問に二つの理由をあげた。その一つは現行Bクラス(そしてAクラス)に乗っている顧客の確保である。彼らのほとんどは55歳以上で、高いドライビング・ポジションを好んでおり、そろそろ買替え時期にさしかかった彼らを早急に安心させたかったのである。さらに2番目の理由はコンセプト作りが早く決定し、その結果、開発スタートがAクラスよりも先行したというロジスティックなためでもある。
社内開発コードが先代のT245からW246と大きく変わったようにニューBクラスは歴代のモデルチェンジには見られないほどの大きな変化を内包している。
そのもっとも顕著な例が前述の新しいプラットフォームである。この新しいシステムをベースに構築されたBクラスのサイズは全長4359mm(+89mm)、全幅1786mm(+9mm)、全高1557mm(-46mm)、そしてホイールベースが2699mm (-79mm)と長く、低く、そして僅かに幅広くなっている。
ゴーデン・ワーゲナーが指揮を執ったデザインは全体のスポーツツァラーとしてのシルエットは継承しているがグリル周辺、あるいはサイドパネルの抑揚のあるキャラクターラインなどデザイン・ランゲージはダイナミックに変化している。特にヘッドライトとその中に組み込まれたデイドライビング・ライトは非常に特徴的でニューBクラスを印象付けている。さらに驚くべきはこのボディは空力的にも洗練されておりこのクラスとしては異例といわれるCd値0.26を達成している。この辺りは旧モデルで成し遂げなかった課題をニューモデルで何とか解決したメルセデス・ベンツ・エンジニアの意地すら感じる。
一方、インテリアも大きく変化している。ダッシュボードにはジェットエンジンの噴射口を思わせる合計5個のエアアウトレットが並び、中央にはフラットスクリーン・デザインのディスプレイが置かれている。さらに正面のメーターはスピードメーターとタコメーターが同一サイズになり、ステアリング・コラムスイッチレバー(ウィンカー、ワイパー)はシフトレバーに合わせて、これまでの10時20分から9時15分のポジション、つまり水平になった。明らかに若返りを目論んだ攻めのデザインである。
搭載されるエンジンは1.6リッターのガソリン仕様と1.8リッターのディーゼル仕様で共に新開発の4気筒ターボで2種類のチューンが与えられている。さらに組み合わされるトランスミッションも新開発で標準装備にコンパクトな3軸マニュアル6速、オプションでは湿式クラッチを持った7速DCT(デュアルクラッチ)が用意される。
初めにテストしたのはB200ブルーエフィシエンシーで最高出力156ps、最大トルク250Nmを発生する。まずドライビング・ポジションが旧モデルよりは若干(およそ6cmほど)低いと聞かされていたが、それでも一般的なクルマよりは8cmほど高く、十分に視界の良さは確保されており、これならばメルセデスの狙い通り旧Bクラス・オーナーも迷うことはないはずだ。
ウィーン空港からまずアウトバーンに入って驚いたのは「これはSクラスか?」と思わせるほどの快適な乗り心地であった。それにも関わらず大げさなピッチングやロールは感じられず、およそ120km/h付近で急なレーン・チェンジを敢行しても不安定な挙動は見られない。これならばいつエルク(ヘラ鹿)が出てきても怖くない(!?)。
加えて感動したのはメルセデスの開発になったDCTでウィーン市内での渋滞でストップ&ゴーを余儀なくされても、これまで同様のシステムに見られたギクシャクした挙動は全く見られず、スムースにシフトが行われていた。もちろんアイドリング・ストップ&ゴーは標準装備である。
また、郊外などではマニュアルモードを選択してスポーティなドライブを楽しむことが可能だ。さらにもっと積極的なドライブを望むオーナーにはスポーツ・パッケージをお勧めする。およそ20mm低められたシャーシは若干固めだが、ダイレクト・ステアリング(メカニカル可変システム)も組み合わされるので敏捷さがまして楽しいことは請け合いである。
最後にこのBクラスにはメルセデス・ベンツの良心とも言えるほどの沢山の安全装備が標準で装備されている点を報告しておこう。中でも急に飛び出した歩行者や、急停車した前方のクルマとの衝突を回避するためにドライバーの急ブレーキを補佐する「緊急ブレーキアシスト」は特筆に値する。自動完全停止までは行かないが制動距離は著しく短縮されるはずである。
高いドライビング・ポジションを約束しながら、若々しいスタイル、快適な乗り心地、一歩進んだ安全装備品などなど多くのメルセデス・ベンツ独自のフィーチャー(特徴)を与えられたニューBクラスの日本販売は、来年の5月からスタートする予定である。
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