新型Aクラスに試乗。ベースグレードの走りは？

「これしかない」と思わせる魅力アリ

それにしても新型Aクラス、眺めていて、そして走らせて何とも清々しい感じがするのは、まさに見た目にしろ走りにしろ、そのコンセプトがきわめて明快だからだろう。割り切るところは潔く割り切ることで、魅力がギュッと凝縮されたクルマに仕上がっている。人によって好き嫌いはあっても、気に入った人には「これしかない」と思わせる、そんな強い個性が宿っているように感じられるのだ。

正直に言うと、これまで培ってきたAクラスとしての歴史に、ほんの少しだけでも留意してくれてもよかったんじゃないかな…という思いは無くはなかった。しかし実際にステアリングを握ってみて、方向性は180°と言ってもいいぐらい変わっても、割り切ることで個性を抽出するんだというやり方は、それこそ初代から引き継がれたAクラスの伝統と言ってもいいのかも、と思えるようになってきた。つまり、その名前を継承する意味は、そこにあるのだなというわけである。

いずれにせよ、新型Aクラスはこのセグメントでは間違いなくチャレンジャー。デザイン、走り、そしてクラスの常識を超える安全装備の充実ぶりといったクルマ自体の魅力もそうだが、豊富なカラーバリエーションやトリムの設定、更にはアニメを駆使したPRなども含めて、定番として君臨するゴルフを、やもすれば保守的で退屈に見せかねないほどの勢いには、思わず目を見張る。それを仕掛けるのが、あのメルセデス・ベンツなのだと考えると、尚のこと面白い。

新型Aクラス、このセグメントの勢力図に変化を生じさせること必至の、注目の1台であることは間違いない。これなら新型ゴルフの導入を待つことなく、手に入れたくなる魅力、そこには十分に感じられたのだ。