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アストン・ラピード試乗 スポーツカー足りえたか

意外とソフトで快適な乗り心地

というわけで、リアシートが使えることは分かった。ではその走りはどうなのか、ということでその翌日と翌々日、ヴァレンシア周辺の高速道路や山間のワインディングロードにラピードを駆り立てのだが、そこでも僕は期待を裏切られることはなかった。大柄なボディにもかかわらず、ラピードはスポーツカーらしい挙動を見せてくれたのである。

まずパフォーマンスに関していうと、車重1950kgとDB9より190kg重くなっているから加速はDB9よりほんの少し牙を抜かれた印象があるが、0~100km/h加速5.2秒、最高速296km/hという動力性能に、もちろん不足はない。しかもアストンのV12は、いかにもイギリスのスポーツカーエンジンらしく低回転から豊かなトルクを捻り出すから、低速からでも軽く踏めばグッと反応する。その一方で、レスポンスのいいパドルを叩いて積極的にシフトダウンし、高回転まで引っ張り上げると、当然ながら迫力の加速を味わうことができる。しかもそういった状況では、4000rpm弱からエグゾースト系のバルブが開き、V12が豪放な排気音を奏で始めるのが好き者の感性を刺激する。

シャシーのする仕事に関していえば、最初に感激するのが乗り心地の快適さだ。電子制御アダプティブダンパーはノーマル状態ではかなり柔らかいセッティングで、専用開発のBSポテンザS001なる20インチタイヤを標準で履いているにもかかわらず、ほとんどサルーン並みのソフトな乗り心地をもたらしてくれる。そこで、ある程度スピードを上げたところでダンパーをスポーツモードに切り換えると、それでもスポーツモードの一般的なイメージほどは硬くない、ちょうどいい具合に締まった乗り心地が手に入る。と同時にラピードの室内、風切り音や内装の革のこすれる音などが気にならないのも印象的で、ここにはNVH担当の日本人チーフエンジニア、石川さんらのキメ細かい仕事ぶりが伺える。

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