新型クラウンは歴史の呪縛を解かれパーソナルカーの性格を強めた
掲載 更新 carview! 文:島下 泰久/写真:望月 浩彦
掲載 更新 carview! 文:島下 泰久/写真:望月 浩彦
そう感じる人にとって最良の選択肢となりそうなのが、マルチステージハイブリッドシステムを搭載する3.5 G-Executiveだ。V型6気筒エンジンの滑らかな回転上昇と心地よいサウンドはワンランク上の上質感を味わわせてくれるし、電気モーターならではの豊かなトルクは、ラフにアクセルを踏み込むと瞬間的にホイールスピンを起こさせるほどで、頬緩ませるのに十分だ。
この日、最後に乗ったのはハイブリッドの2.5G。シート地はファブリックで、ダッシュボードがレザー張りではないなど内装はシンプルだが、丁寧な作り込みのおかげで寂しく見えたりはしない。スイッチ類の操作感の良さなど、美点はすべてのモデルに共通である。
走らせても、案外トルクは十分に出ていて扱いやすく、これはこれで不足を感じさせることはなかった。しかも燃費計を見れば、表示されているのは、3.5Lハイブリッドの1.5倍近い数字である。トータルで見た時の満足感は大きい。
タイヤは17インチサイズ。大きなうねりを通過した時などの、豊かなエアボリュームを感じる柔らかな乗り心地が好印象だ。但し、舗装が荒れたところではコツコツという感触が目立つ感もあった。これは、エコ志向の銘柄のチョイスに拠るものかもしれない。
主張は決して強くなく、実際の乗り味も穏やかで大人しい。その意味ではもっともクラウンっぽいのはコレかもしれないとも思えた。但し、その奥底にはベースのポテンシャルの向上ぶりをひしひしと実感できる。すっぴんだからこそ、却ってその辺りが引き立っているとも言えなくはなさそうだ。
クラウンは軽快になった。それが試乗を終えての実感である。実際にその走りが軽やかさを帯びたというだけでなく、歴史の呪縛からいい意味で解き放たれ、身軽になったような印象が漂う。もはや薄れかけていたステイタスシンボル的な役割はある程度見切って、パーソナルカーとして、自分の満足のためのクルマとしての側面が強くなっているように感じられる辺りは、まさに今の時代のプレミアムカーのあり方ではないだろうか。
実際にどれだけの新しいユーザーを惹き付けられるのかは解らない。けれど少なくとも私にとって、これなら真剣に自分のクルマとして向き合うことも出来るかもしれないと、クラウンに対して初めて感じたのは本当である。あとは、見た目だけではないその変化を、いかに世の中に伝えていくかである。
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