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電動化に突き進むフォルクスワーゲン成功のカギはスマホ化にあり? 開発の最前線を取材した

あらゆる手段を使ってCO2排出量削減に取り組む

包括的な脱炭素プログラムの3つの原則は「効果的で持続的なCO2の削減」「電力供給の再生可能エネルギーへの切り替え」「不可避のCO2を相殺」。BEVは走行時のCO2排出量を下げることは得意だが(国や地域の電源構成に大きく依存するものの)、生産時はエンジン車よりもエネルギーを使う。そこでまずは工場のCO2排出量削減に取り組んでいる。

本社工場ウォルスブルクは昔ながらの煙突が象徴的だが、この発電所のエネルギー源を石炭からガスへ切り替える。アウディのブリュッセル工場はすでにCO2ニュートラルを達成、MEBのマザー工場となるツヴィッカウも追従する計画。2025年には30%ほどのCO2排出量削減(2015年比)を実現できる見込みだ。どうしても避けられないCO2排出は、当面の間は気候保護プロジェクトへの大規模投資、植林活動や森林保全のための基金を創設することで相殺していくという。

これまでゴルフなどMQBのエンジン車を生産してきたツヴィッカウ工場はMEBの生産に切り替わっていく。すでにMEB用のラインは新設されており、試験的な生産を開始。2019年末には本格生産が立ち上がり、2020年にはMQBとMEBが約半分ずつ。2021年にはすべてがMEBに。年間生産能力はこれまで30万台だったが、2022年には33万台まで引き上げられる。

現在は従業員のトレーニングも行われ、基本的な電気の仕組みから、VRを活用してID.3の組み立て体験などを実施しているほか、マインドチェンジを図るプログラムもある。用意された小部屋に入ると、壁にはヒトラーからメルケルまで歴代首相の写真が並び、ベルリンの壁崩壊などといったドイツの歴史を振り返る内容になっている。世の中は常に変化しているが、人々はそれに対応して上手にやってきたということを伝えているのだろう。

BEVはエンジン車に比べて30%ほど短い時間で生産できるため、雇用を減らす必要もあり、従業員のなかには懐疑的な人がいるのも事実。そのケアのためにもこういったトレーニングは重要なのだ。個人的には、MEBの取材のなかでこの小部屋がもっとも電動化への本気度を感じた。目標達成のためにはあらゆる手段を使うという強い意志を感じたからだ。

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