オフロード試乗に見る ランドローバーの哲学
掲載 更新 carview! 文:岡崎 五朗/写真:小林 俊樹
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まずは足慣らしを兼ねて斜度28度のバンクに進む。かなり強い横Gと転倒の恐怖を感じるが、ドライバーの不安をよそにクルマはどっしりと安定している。ディスカバリー4には傾斜を自動的に感知して低い側のサスペンションを伸ばす機構が付いているため、最大40度までの傾斜を走破できる。つまり28度の傾斜など朝飯前なのである。
大きな凹凸が連続するモーグル路でも、テレイン・レスポンスはオンロードモードのまま。当然、デフロックはかかっていないが、対角車輪の双方が浮き上がるような状況でも、空転した車輪のみにブレーキをかけることで接地したタイヤのトラクションを確保。長いサスペンションストロークと相まって、“亀の子”になることなくあっけなくクリアしてみせた。液晶モニターには各輪のストローク状況とグリップ状況、ステアリング操舵角がグラフィカルに表示され、車両状態が手に取るようにわかるのも親切だ。
下り坂では、ランドローバーが特許をもつHDC(ヒル・ディセント・コントロール)が効果を発揮する。HDCをオンにしておくと、ブレーキ操作をしなくても自動的にABSが作動し、安定した姿勢を保ったまま速度を確実にコントロールしてくれるからだ。設定速度はクルーズコントロールのスイッチで3.5km/h~20km/hの範囲で調節することもできる。なお、HDCは下りだけでなく、上りでバックする際にも有効だ。急坂を上ろうとしたが登り切れず後退…といった際にも、コントロールを失って横向き→転倒といったリスクを最小限に抑えてくれる。その他、急な上り坂やぬかるみも走ったが、オンロード志向の強いノーマルタイヤのままでも、こうしたセクションを難なくクリアしたのには正直驚いた。
ランドローバーらしさを感じたのは、トラクションコントロールと、GRC(グラディエント・リリース・コントロール=坂道発進サポート機構)の味付けだ。タイヤの空転を防ぐという目的は他社と同じだが、ランドローバーのそれは作動タイミングが早めであり、派手に空転してから介入といったことにならない。わずかな空転がスタックを招く極限の状態では、こうしたチューニングが天国と地獄を分けることを、ランドローバーは身を持って知っているのだ。また、GRCについてもブレーキをポンっと急に抜くのではなく、ジワ~っと徐々に抜いていく。これもオフロード走行時の安心感、走りやすさにつながる工夫だ。
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