ミュルザンヌとフライングスパー、V8モデル2台試乗
掲載 更新 carview! 文:吉田 匠/写真:望月 浩彦
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スロットルを踏むと、フライングスパーは2.5トンをオーバーする車重を意識させぬ軽やかさで路面を蹴って、走り出す。4リッターV8ツインターボエンジンは507psと660Nmを生み出し、ZF製8段ATを介して4輪を駆動するが、ひとたび全開をくれれば2560kgの車重を発進から100km/hまで5.2秒で加速させ、最高速295km/hに達するという高性能を秘めているだけあって、ゆっくりした流れに乗って走っていても、常に余裕を感じさせる。
さらにこの上に、625psと800Nmを叩き出す6リッターW12ツインターボを搭載したフライングスパーという選択肢もあり、それはそれで迫力あるクルマだった記憶はあるけれど、僕自身の常識でいえばV8モデルでまったく充分、というのが正直な実感ではある。
今回、フライングスパーV8に乗って最も印象的だったのは、そういったパフォーマンスよりもむしろ乗り心地だった。電子制御エアサスペンションには、フライングスパーはサルーンであるという原点に立ち返ったようなソフトなセッティングが施され、乗員には当たりの柔らかい快適な乗り心地が提供される。しかもそれは無用にソフトなわけではなく、あくまで腰のある感触で、柔らかいなかにも確実にフラット感が演出されている。
したがって、仮にドライバーがコーナーを攻める気分になったとしても、それなりにロールこそするものの、安心感のあるフットワークが提供される。さらに雨の日などの悪条件に遭遇したとすると、それに加えてフルタイム4WDの強みが発揮されるはずである。
一方、短時間ながらドライビングしたコンチネンタルGT V8Sは、同じ4リッターでありながら628psと680Nmへと若干強化されたエンジンを積むが、そのことよりもフライングスパーとのシャシーセッティングの違いの方が顕著に感じ取れた。シンプルに表現すれば、GTの脚はスパーより硬めで、スパーの19インチに対して20インチを履くタイヤの存在感をより明確に伝えてくる。と同時に、コーナリング時のロールはスパーより軽く、実際に車重が250kg以上軽いこともあって、身のこなしは一段と軽快かつドライな印象をうけた。
いずれにせよこの2台、基本は同じ素材を使いながら、いずれも4ドアサルーンと2ドアGTクーペというボディ形態に相応しいキャラクターを備えるに至っていると実感した。
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