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世界初の量産型燃料電池車「ミライ」が描く未来とは?【前編】

卵が先か、鶏が先か

燃料電池は水素(H)と酸素(O2)を使って発電するシステムだ。発電段階で発生するのは水(H2O)だけ。燃料電池という呼び名から電池(バッテリー)の一種だと思われがちだが、それはちょっと違っていて、実情は水素と酸素を使った「発電装置」である。初の実用化は1965年のジェミニ5号。それ以降、映画化されたアポロ13号やスペースシャトルでも、電源と飲料水用に燃料電池が使われた。

宇宙船では水素と酸素の両方を持っていくことが必要だが、空気中に含まれる酸素を使える地上なら、水素さえ確保できれば発電できることになる。そこで気になるのは、(1)水素を作り、運搬し、貯蔵し、供給するインフラをどう整えるのか? (2)水素や燃料電池のコストを含め、経済原理に乗せられるのか? (3)水素の生成や供給時に消費されるエネルギー(二酸化炭素の排出)は? といった問題だ。

事実、燃料電池車普及に対する懐疑的な意見は概ね上記の3点に集約される。たしかにその通り。後ほど触れるが、どれも理にかなっているし、やすやすと越えられるハードルじゃない。しかし、だからといって誰も取り組まなかったら何も始まらないのも事実。簡単な話、この世に燃料電池車が1台も走っていなければ水素ステーションを作る企業なんて出てくるはずがないのだ。

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