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アルファ8Cスパイダー クルマの快楽ここにあり

自動車が忘れてほしくないもの

今回はクーペを試した時のような限界域での走り、つまり横滑り防止装置VDCを解除した走りを体験できなかったが、解除しても先に垣間見たハンドリングは持続すると思える。もっとも粘りが強い分だけにリアに力は溜まるため、スライドはクーペより鋭く速い動きなるだろう。

つまり常用域のハンドリングでスパイダーは、クーペほどの自在性は与えられていない分しっかり感を高めた設定だ。もっともそこまでの違いを垣間見ようとせずとも、スパイダーの場合はオープンエアモータリングによる爽快感と、大気とつながるからこそのクルマとの一体感などが高く得られるため、そうしたハンドリングのわずかな違いはほとんど気にならない。いやむしろ、大排気量FRを風とともに味わう甘美な世界に身も心もとろけてしまう感覚がある。

当然のように8Cスパイダーは燃料消費率もCO2排出量も、少なくない数値を示している。しかしそれゆえに、人間の欲望を強く刺激するだけの決して抗えぬ魅力を存分に備えている。そう考えるとこのクルマは悪魔のささやきなのかもしれないし、天使の誘惑なのかもしれない。しかしいずれにせよ、8Cスパイダーは“大人の”ロマンチック・モードを確実にオンにするクルマに違いない。もっともそのためには2650万円という対価が必要なのだが…。

ただそれでも8Cスパイダーに感じるようなロマンチックな雰囲気は、もっと現実的な価格の自動車にも残ってほしいものに思えるし、この先技術が進化して燃料消費率やCO2排出量が低減されてもなお、自動車が忘れてほしくない大切なものだと思うのである。全てのクルマがそうなる必要などないとも思うが、それでも8Cスパイダーのような“感じさせるクルマ”は絶対に必要だし、存在し続けてほしいと僕は願うのである。

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