アルファ8Cスパイダー クルマの快楽ここにあり

手の込んだスパイダー化

身体の奥にまったりとした熱さを呼び起こすような、直情的な古典のフォルムを現代の手法でアレンジしつつ、新たな時代のアルファロメオのデザイン言語に昇華した感のある8Cコンペティツィオーネは、我々がアルファロメオというブランドに対して抱く“官能”のイメージを最も強く表現していた。しかしいま目の前にある8Cスパイダーはそれよりもさらに強く、官能を表現し眩しいほどの華やかさをふりまく。

特にクーペではルーフラインやリアウインドーの終端が着地していたリア周りが、スパイダーではそれらがなくなることによって、例えばリアフェンダーの膨らみが一層強調されて艶かしく、サイドからのフォルムは一層セクシーな印象を増した。

スパイダー化は意外に手が込んだもの。まずルーフを取り払ったことで独立するウインドーフレームと、一体式となるリアのフェンダー及びトランク周りを架装する辺りがクーペとは異なる。ウインドーフレームはカーボン製で、カバーとフレームの二分割構造で強度を持たせ、これをボンドとボルトでボディに締結する。またリア回りではガソリンタンクがクーペよりも30mm前へ移動されており、これによってオープン化による前後重量配分の変化を是正し、50：50とする。

オープントップは2アクションを要す仕組み。まずウインドーフレーム室内側中央のロックを解除し、コンソール上のボタン操作で開け放つ。この簡単な機構のため開閉時間は10秒以内と極めて短い。またスパイダーの名を与えるだけに、ソフトトップは表と裏がある2層構造のシンプルなものを用いた。

屋根を開け放って走り出すと、実に甘美な世界が展開されるのだった。