BMW Mでサーキットへ 究極のドラテクスクール
掲載 更新 carview! 文:編集部/写真:中野 英幸
掲載 更新 carview! 文:編集部/写真:中野 英幸
富士スピードウエイのレーシングコースのパドックで、ドライバーズシートに座っているのに、レーシングスーツもヘルメットもナシというのは違和感だ。なにしろF1日本FPが行われたコースである。手元のカップホルダーにはトランシーバー。指示に従いエンジンスタートボタンを押すと、ヴォンという太く短く乾いた音で X6Mは目を覚ます。周囲よりひと際高いダッシュボードの向こうに前走車のM3とM6。無線の合図で、3台のコンボイはピットを出て行く。X6Mはしんがりだ。
「まずはゆっくりコースを覚えます」というインストラクターの発言は、少なくとも最初はウソじゃない。短い加速の後、充分に減速して1コーナーにつく。クリップからスルスルと加速して2コーナーをかすめる。だが、コカ・コーラコーナーに差し掛かる頃には横Gは結構な具合になっている。そして無線は言う。「この先、速度に気をつけて…」
続くヘアピンにはその横Gを残したままブレーキングでアプローチ。2トンをはるかに超える巨体をギュッと沈めつつ減速するX6Mの、ブレの無いソリッドなフィールはちょっとした驚嘆だ。軽く踏んだつもりが一気に速度が落ちて、あわててブレーキを戻す。ウインドウの向こうで先行車が瞬く間に小さくなる。300R、もう全開に近い。さすがにダンロップコーナーのシケインから先のテクニカルセクションでは、難解なラインを指し示すように減速するが、2週目以降、当然のような数段のスピードアップが待ち受ける。
そしてM3が素晴らしい。1台用意された6速MT仕様には巡り合わせで乗れなかったが、スピードの乗った周回に付いて行くには7速DCTでラッキーだったと白状しよう。コース上にあった数分間、イメージの数割増しのパワーで自在に加速と減速を繰り返し、視線の移動をピタリとなぞるようにノーズが入る様を、まるで自分が上手くなったかのように楽しんだ。アスファルトの粒までなぞるようなステアリングフィールや、脳の信号を受けた右足の筋肉がわずかに緊張する、その瞬きにも反応するようなスロットルを通して。コーナー脱出の瞬間のトルクの立ち上がりの滑らかさに、アドレナリンが全開になる。
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