SL65AMGブラックシリーズ清水和夫・後編！

メルセデスファミリーのDNA

ほんの僅かな時間であったが宙に浮いたブラックシリーズの中で中性浮力を感じた。だが、次の瞬間に路面に叩きつけられると思ったが、 実際はしなやかに路面に着地し、何事もなかったように坂を下る。サスのストロークもボディ剛性もダンピングも完璧だ。SL65の売り物であった油圧アクティブ・サスは軽量化のためにメカ・サスに変更されている。だが、路面とタイヤの接地性はすばらしいではないか。ハイスピードで走るほどしなやかに路面をホールドする。公道を走るかぎり、もっと硬く感じる。ちょうどノーマルのSL65AMGとフルカーボンボディのSLRの中間くらいの乗り味だ。

数千万円をポンと出せる富裕層なら3千万円のSL65AMGよりもブラックシリーズは魅力的かもしれない。しかし、スポーツカーを単に速さという物差しだけで測るのではなく、対話できるかどうか、その点を大切にして測ってみるべきだろう。

その意味ではノーマルのSL65AMGとブラックシリーズは別の言語を持ったスポーツカーだ。味が異なるだけではなく、対話のしかたが異なるのである。SL65AMGはカーバランス全体で運動能力を表現しているが、ブラックシリーズはエンジンが主役だ。エンジンと対話しないと気持ちよく走らせることができない。