ベンツ AクラスがMC。河口まなぶがテスト!
掲載 更新 carview! 文:河口 まなぶ/写真:荒川 雅臣
掲載 更新 carview! 文:河口 まなぶ/写真:荒川 雅臣
ところでAクラスは現在、オーナーの約半数を女性が占めるのだという。メルセデス・ベンツという言うまでもなく高いブランド性と、それとは相反するリーズナブルな価格、また広い居住空間と荷室や扱いやすいサイズ、高めのアイポジション、そしてブランドのコアでもある安全性の高さを考えると、なるほど女性の目は確かだなと思う。台数では確かにBクラスが上であるものの、見て判る通りあちらはAクラスに比べると確実に生活感が漂いがち。そう考えるとこの傾向には強く納得がいくわけだ。
そしてここに、商品としての勘どころがある。日本の自動車メーカーからは「女性向け商品を企画すると売れない」と聞くが、それは女性に対して媚びた企画だからだろう。そんな風に思える根拠をAクラスに見出すことができる。もちろんメルセデス・ベンツはAクラスを女性向けとして企画していない。だが要素としては高い商品性に彩られる。そういう部分が女性に支持されるのだと思うのだ。
話がすっかりそれたが、メルセデス・ベンツは今後もAクラスを継続するようだ。もっともAクラスの存在意義ともいえたフロアの2重構造が継承されるかどうかは怪しいというのがもっぱらの噂だ。既に時代は大きく動きつつあるだけに生産効率を高める必要があるのは新型ゴルフVIでも証明されている。そう考えると次期型は意外やコンベンショナルなレイアウトを採用するのではないか、という予測が強いわけだ。もっともメルセデス・ベンツが手がけるのだから、再び驚かせてくれるとは思うのだが…。
すると現行Aクラスは俄然価値を増すようにも思える。来るべき将来を見据えて誕生した2重構造フロアが生んだその空間は、量産車としては本来の目的に使われることがなかった。しかし安全性には寄与しているし、メルセデス・ベンツ初のコンパクトカーとし て、他とは明らかに違うモノであることを主張する理由にもなっている。そして何より、驚くほどの居住性の高さを生んでいる。生産の手間暇を考えれば負の部分もあるが、ユーザーへのメリットは大きいことに間違いない。
そうして改めて振り返ると、そこには現代に問われるコンパクトカーの正義があるように感じる。リーズナブルさを主張するあまりに安普請を貫く他とその違いは極めて大きい。そう考えるとAクラス、実に理想的なコンパクトカーなのだと気付き強く感心する。そ してこの発想や意志は、時が経っても決して色あせることのない高い価値である。
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